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スペックアップとコストダウンを両立した中級機〜ソニー「TA-DA7000ES」インタビュー(1/3 ページ)

» 2004年09月07日 00時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 風の噂で「今年の年末は、ちょっとがんばれば購入できる、中級クラスのAVアンプが充実しそう」と聞いていた。すでにデノンは税抜き希望小売価格が15万円の「AVC-3890」を発表。他社もこのクラスの製品がやや古くなりつつある。よく売れるミドルクラスだけに、今年は各社とも新製品が出てくるだろう、という予測だ。

 そうした予想をトレースするかのように、先日、ソニーから「TA-DA7000ES」の発表が行われた。なんでも本誌でも紹介した「TA-DA9000ES」の経験を生かした中級デジタルアンプだという。そこで、発表リリース文からはわかりにくい部分を確かめに、ソニーの視聴室に伺ってみた。

photo 「TA-DA700ES」の外観。照明の都合でゴールドにみえるが、きょう体の色はシルバーだ。価格は24万1500円で11月21日に発売予定

スペックアップとコストダウンを両立

 さて、勢いで取材に伺ってみたものの、まだレビューが行える段階ではない。というのも、TA-DA7000ESの出荷日はまだずっと先、11月21日だからだ。したがって、以下の記事のうち、スペックや仕様に関する部分は製品版も変わりないが、音質に関しては現在進行形で変化している。

 TA-DA9000ESの開発リーダーでもあったソニー・ホームオーディオカンパニー・コンポーネントオーディオ事業部AVエンターテイメント部商品設計1課シニアエレクトリカルエンジニアの金井隆氏によると、「現時点でお見せできるのは、チューニングが始まって1カ月ちょっとの段階のもの。劇的に音が変わってきているところなので、音質が落ち着くまでには、あと1カ月ぐらいは必要です」とのこと。よって、音質に関するコメントは最小限に控えておきたい。

 TA-DA7000ESの外観は、TA-DA9000ESのそれを踏襲するものだ。もう少し詳しく書くなら、海外で販売されている「TA-DA5000ES」と全く同じフロントマスクを持つ。ソニーは昨年末、トップエンドのTA-DA9000ESのみを国内投入したが、海外では他にもTA-DA5000ES、「TA-DA3000ES」と二つのデジタルアンプ採用機を投入している。

 しかし、TA-DA7000ESはフロントマスクこそTA-DA5000ESと同じだが、その中身は全く別のものである。後述するように「S-Master PRO」を構成するDSPとMOS-FETに、TA-DA9000ESよりも優れたデバイスを奢り、信号経路の構造もTA-DA9000ESに似せるなど、そのノウハウを活かしながら、コストダウンに成功している。

photo TA-DA7000ESの内部。さすがに「TA-DA9000ES」よりは小さいが、大型のEIトランスを電源に使用している

 電源も大型のEIトランスを用いたアナログ電源(デジタルアンプにはコンパクトなスイッチング電源を採用する例が多い)を採用。さすがにTA-DA9000ESのトロイダルトランスよりは小さいが、それでも短時間ならば70アンペアを取り出せるという大型のものだ(DA9000ESは瞬間的には250アンペア、50アンペアならコンスタントに取り出せる)。これは、もともとノイズ対策が音質向上の鍵となるデジタルアンプに、さらにノイズ源となるスイッチング電源を入れるのは得策ではないとの判断からだ。

 電源部、シャシー剛性、端子数などはTA-DA9000ESからデチューンされている部分だが、それ以外に関しては、スペック上はすべて“向上”していると言っていい。少なくとも、劣る部分は少なそうだ。たとえばコンポジット/S-Videoをコンポーネント信号にアップコンバートするビデオ部の回路は、TA-DA9000ESと全く同じものだという。

 むしろ向上している部分の方が多く、S-Master Proを構成する部品が向上したこと以外にも、たとえばすべてのアナログ入力がA/DSD変換に対応するようになった(TA-DA9000ESはマルチチャンネル入力のみ対応で、ほかの端子は24ビット48kHzのAD変換)。TA-DA9000ESでは「操作感と音量変化がマッチしない」と不評だったボリュームも、DA7000ESでは実にダイレクトな感覚へと“大幅に”改善。スピーカー端子もツマミのサイズこそ小さいものの、より音質を重視して顔料を減らして柔らかさを出した材質へと変更されている。

photo スピーカー端子。音質を重視し、顔料を減らして柔らかさを出した材質へと変更された

大幅に見直されたS-Master Pro

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