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第四回:“デジタルホーム”は、意外と不自由特集:私的複製はどこへいく?(1/3 ページ)

» 2004年09月22日 08時34分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 前回は記録メディアの分野で、私的複製の制限に用いられる可能性がある最新技術を紹介した。しかし、コンテンツは必ずしも記録メディアに収められて配布されるとは限らない。コンテンツのデジタル化と時を同じくして、ネットワーク化の波が家庭にも押し寄せているからだ。

 ADSLの加入者は既に1200万を超え、FTTHの加入者も150万を突破した。こうした高速ネットワークがデジタルコンテンツの流通手段となるのは、むしろ自然な流れだ。

 だが、流通手段がパッケージからネットワークとなり、コンテンツ(ファイル)が直接利用者の手元へ送られるようになっても、「私的複製をもコントロール下に置きたい」という権利者側の方針は変わらない。むしろ、“これからの利用スタイル”として、より慎重に検討が進められているぐらいだ。

 では、ネットワークを利用して家庭内に存在するコンテンツを活用する「デジタルホーム」で、権利者側はどのような形で私的複製の制限を行おうとしているのか。具体的に見ていこう。

IPでつながる世界「デジタルホーム」――中心となるDTCP/DTCP-IP

 まず、ここでは「デジタルホーム」を、“家庭内の機器がIPネットワークによって接続され、コンテンツの相互利用を可能にしている家庭”として話を進めよう。

 なぜここでわざわざIPと限定するのか?

 もちろん、専用のネットワークプロトコルなどを利用する形態も考えられる。だが、Hewlett-PackardやIntel、Microsoft、NEC、松下電器、ソニーなど、主要な電機メーカーやPCメーカー約140社が加盟している「Digital Living Network Alliance」(DLNA)は、デジタルホームの基盤ネットワーク技術として、IPやHTTP、Wi-Fiなどを推奨している。となれば、独自規格によるデジタルホーム構想は、メインストリームから外れるものと考えられるからだ。

 このデジタルホームの構想では、「リビングのホームサーバに映像コンテンツを蓄積し、その映像をLANで接続された寝室や自室のPCやTVで楽しむ」といったシチュエーションが想定されている。記録メディアを利用せず、家庭内のネットワークでコンテンツを配信させるわけだ。となれば、権利者側からすれば、ネットワーク内部でどのようにして権利保護を持続させるかがポイントになる。

 そこで中心的な技術となるのが、送信時にコンテンツへ暗号化を施し、受信時に暗号化を解除する「DTCP」(Digital Transmission Contents Protection)と、「DTCP-IP」(Digital Transmission Contents Protection over Internet Protocol)だ。

 このうち、DTCPはIEEE 1394やUSBなどに対応し、DTCP-IPはDTCPをIPネットワークでの利用に対応させたものである。

DTCPの模式図。

 DTCPは、そのライセンス組織であるDTLA(Digital Transmission Licensing Administrator)が発行した“機器証明書”を送信側・受信側でハードウェア的に持つことが前提となり、コンテンツが送受信される際には、次のような手順で暗号解除が行われる。

(1)接続した機器がDTCP規格に合致したものか、機器証明書を用いて相互認証する

(2)受信側が送信側に認証を要求し、機器証明書を利用しての相互認証と暗号鍵の交換を行う

(3)送信側がコンテンツを暗号化し、送信する。送信の際にはCCI(Copy Control Information)も当時に送信する

(4)認証後に、受信側が受信してた暗号化コンテンツの暗号解除を行う

 手順を見れば分かるように、DTCP/DTCP-IP自体はコンテンツの暗号化/暗号解除と伝送手段を定めたものだ。私的複製のコントロールを行うのは、(3)の段階で、コンテンツと同時にやりとりされる「CCI」というものである。

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