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「メディアは安い方がいいでしょう?」――東芝がDVD-R(VR)を採用したワケインタビュー(1/3 ページ)

» 2004年09月28日 16時01分 公開
[北川達也, 渡邊宏,ITmedia]

 東芝は28日に発表した新型HDD/DVDレコーダー「RD-X5」に、最も安価な記録型DVDメディア――つまり、DVD-Rメディアに対してDVD-VR(ビデオレコーディングフォーマット、以下、VRモード)で記録する機能を業界で初めて搭載した(RD-X5の詳細についてはこちらの記事を参照)。

 VRモードでの記録は従来、DVD-RAMまたはDVD-RWメディアのみでサポートされ、DVD-Rメディアは、DVD-VR規格が策定された2000年当時から規格上は認められていながらも、これまで機器に実装されてはこなかった。

 だが、RD-Styleシリーズは今回、あえてその録画モードを搭載した。RD-Styleシリーズの生みの親として知られる東芝 デジタルメディアネットワーク社の片岡秀夫氏(デジタルAV事業部 DAV商品企画部 参事)は、その理由を「デジタルAV機器のカルチャーを変える」という設計思想のもと、行ったことだと説明する。同氏にその意義や位置付けについて、詳しい話を伺った。

RD-Styleシリーズ生みの親として知られる東芝 デジタルメディアネットワーク社の片岡秀夫氏

「安いメディアにVRで記録できる」――DVD-RへのVR記録は“念願の機能”

 「DVD-RのVRモードというものはDVD-RAMやDVD-RWのVRモードと同時に登場するはずだったもので、急に浮上した規格ではありません。ソフト開発担当としては、RD-2000発売直後から検討を開始しており、私としても、2年近く前からRDシリーズにDVD-Rメディアに対してVRモードで記録する機能を搭載したいと考えていました。ですから、これは“念願の機能”といえるものです」(片岡氏)

 RD-X5で新たにサポートしたDVD-RへのVRモード記録についてこう話す片岡氏。同氏が「念願だった」とまで言うこの機能の最大のメリットは、安価なDVD-Rメディアに対して自由に番組を録画できること――つまり、「“安価なDVD-RAM”として使えること」(片岡氏)だ。

 というのは、これまで、「DVD-Rメディア=市販のDVD-Video互換のVideoモードで記録」という使い方が一般的だった。しかし、Videoモードという録画モードは、何かと制約が多く、しかも、リアルタイムで映像を録画するという用途には、不向きな録画モードでもある。

 「Videoモードは、事前に編集を済ませた素材をディスクに書き込むことに適した、言わばスタジオ向けの録画方式で、家庭での手軽な番組録画に適したものではありません。例えば、コピーワンス放送の録画ができないことはもちろん、左右音声を利用した2カ国語放送にも対応できません」

 しかし、リアルタイムで映像を録画することを前提に設計されたVRモードは違う。ビデオモードでは実現できなかった“自由”な録画機能がある。「DVD-RにVideoモード記録する上で何がめんどうかというと、“下準備”しなくてはならないことなんです。例えば、あらかじめサムネイルとかタイトルなど、(必要なこと)全部をあらかじめ仕込まないといけない。要するに、下準備の“ストレス”があるんです」

 「だから、メディアは買ってあるんだけど、どうせならちゃんと番組名をつけたり、チャプターを分割したり、メニューをつけたいなど、DVD-Videoにして保存する作業を行う時間がない、とか、DVD-Rに書いたものをちょっと直したいんだけど、一からやり直す余裕がない、と困っている人が多いのではないでしょうか」と、片岡氏は、Videoモードでしか記録できない現在のDVD-Rの使われ方について分析する。

 加えて、片岡氏は、「コピーワンス放送が開始されただけでなく、2カ国語放送を録画したいというニーズが高まり、Videoモードでは対応できない状況が目立つ状況になりつつあります。(現状のままでは)DVD-Rはそのポジションを失いつつあるのではないでしょうか」とも話す。

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