松下電器産業は10月1日、非接触型ICカードの機能を盛り込んだSDメモリーカード「smartSD」を発表した。SDカードとの上位互換性を確保しつつ、ICカード機能を併せ持つ「MOPASS」準拠のストレージメディアだ。
松下が、ICカードとメモリカードを融合した理由は、2つの機能の相乗効果によってSDカードの適用範囲を広げること。ICカードの得意分野である認証、決済、会員向けサービスといった機能に、メモリーカードの持つ著作権保護や大容量ストレージなどの機能を組み合わせ、従来のICカードでは不可能だったリッチコンテンツや大容量のアプリケーションデータを扱えるようにする。
同社が例として挙げたのは、「レンタル型コンテンツ配信サービス」。smartSDでは、フラッシュメモリ内の一部領域をICカード内部の「鍵」によって暗号化し、セキュリティを確保した形でコンテンツやアプリケーションを蓄積できる(後述)。ここに映像や音楽、ゲームなどをダウンロードしておき、再生回数や使用した期間によってネットワーク経由で課金・決済を行う仕組みだ。
より身近なところでは、携帯電話による映画やライブのチケット販売が考えられる。既に実用化されている部分でもあるが、smartSDを使うと、「チケットと一緒に色々なコンテンツを伝送し、蓄積しておける」のがメリットだ。たとえばスポーツ観戦のとき。携帯電話でゲートをくぐったあと、チケットと一緒に送られてきた座席表を見ながら自分の席を探す。動画コンテンツが用意されていたら、試合開始までの空き時間に試聴してもいい。
smartSDの構造図を見ると、内部でフラッシュメモリ部とICカード部に分かれていることがわかる。単に2つの機能が同居しているだけではなく、フラッシュメモリをICカードの“拡張メモリ保護領域”として利用できるため、ICカードはより大容量のアプリケーションデータを扱える。
ICカード部には松下独自の不揮発性メモリ“FeRAM”を採用し、高速書き込みと低電圧動作を実現したという。FeRAMは、一般的なEEPROMと比較して書き込み速度はおよそ5000倍。書き込み時に必要な電圧は3分の1以下という特徴があり、「これに書き換え回数(EEPROMの1000倍)をくわえた3点がFeRAMの大きなメリット。とくに高速書き込みは、スピードが求められる交通系のアプリケーションなどにも有効だろう」(松下電器産業の秋山正樹取締役)。
非接触通信インタフェースは、ISO/IEC14443 Type BとJICSAP2.0高速コマンド仕様を自動判別して動作するマルチプロトコル仕様だ。なお、SDカードタイプのsmartSDはICカード用のアンテナを内蔵しているが、miniSDタイプはインタフェースのみ(通常より2ピン多い)。このため、携帯電話などのデバイスにminiSDタイプを採用する場合は、デバイス側にアンテナを内蔵する必要があるという。
松下では、2004年12月にsmartSDのサンプル出荷を開始し、2005年秋の商用化を目指す。smartSDの特性を活かした「業務用ソリューション事業」「モバイルサービス事業」「AV機器コンテンツサービス事業」を順次展開していく方針だ。「松下はコーポレートプロジェクトとしてsmartSDに取り組む。つまり、関連するすべての事業部が関わるということだ。まずは業務用途からスタートするだろう」(秋山氏)。
なお、今回の発表内容は、10月5日に幕張メッセで開幕する「CEATEC JAPAN 2004」に展示する予定だ。
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