日本テキサス・インスツルメンツは10月12日、独自「PurePath Digital」技術を搭載したデジタルアンプPWM(パルス幅変調)プロセッサ新製品「TAS5518」を発表した。
PurePath Digitalオーディオ技術は、入力から出力段までのすべての増幅動作をデジタル信号領域で処理する同社独自のデジタルアンプテクノロジー。フルデジタル処理による高品位な音質と高い電源効率によって、高性能化と小型/省エネルギー化を両立させるデジタル家電向けソリューションだ。
最近ではケンウッドのネットワークAVアンプ「VRS-N8100/VRS-N7100」や日立製作所のプラズマ/液晶テレビ“Wooo”シリーズに採用されている。
アナログアンプは過去の豊富な技術ノウハウがメリットだが、電力ロスが大きい点やDACが必要な点がデメリットだった。電力ロスを少なくするために出力段をスイッチング動作にしたDクラスアンプが近年登場してきているが、信号処理系はまだアナログのものが大半でアナログアンプと同様にDACが必要だったり、スイッチング動作によるEMI(不要輻射)の問題があった。
デジタルアンプは、音質劣化の原因となるデジタル―アナログの変換が最小限で済み、電力ロスも最小限で済むため小型で高性能なアンプが作れるのが特徴。デジタルアンプで従来から懸念されているEMI問題も、PurePath Digitalではデジタルアンプに最適化されたスイッチング回路を開発することで優れたEMI特性を導き出している。
さらに新製品のTAS5518は、8チャンネルPWMプロセッサと前段に48ビットDSPを内蔵。最大8個のスピーカーで48ビット処理による音響補正が行える。PCM→PWM変調係数の改善などにより、ダイナミックレンジを大幅に向上。8チャンネルすべてにおいて110dBの高いダイナミックレンジを可能にした。
「デジタルアンプは従来、6万〜7万円台の初級クラス向けが主流だった。今回、ハイエンド向けにも十分通用する110dBのダイナミックレンジを確保したことで、10万円以上の中〜高級クラスでもデジタルアンプ製品が可能なソリューションとなった」(同社)
シャープの“1ビットオーディオ”や、ソニーのデジタルアンプ技術「S-Master Pro」を搭載した「TA-DA7000」や「TA-DA9000」など、デジタルアンプ技術は初心者向けだけでなくハイエンド機へと広がりを見せている。
TAS5518はすでに、有力AVメーカー向けにサンプル出荷が始まっているという。新プロセッサを搭載したデジタルアンプ製品は、来年にも登場する見込みだ。
「AVフルデジタルのオーディオソリューションは、幅広いAV製品に広がっている。日本のAVメーカーは、“音への匠のこだわり”のブラックボックス化を求めている。われわれはデジタルアンプソリューションという“絵具とキャンバス”を提供し、よりよいサウンドを提供していきたい」(同社DCESカンパニーデジタルオーディオ事業部長の杉木雄三氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR