10月4日に行われた「Blu-ray Disc Association(BDA)」のキックオフミーティングでは、一つのニュースが用意されていた。ハリウッドメジャーの1社、20世紀フォックス(20th Century Fox Film)のBDAへの参加である(関連記事)。
BDAのキックオフでは、ハリウッドメジャーのいずれかがBDAに参加するとの噂が上っていた。しかし、これまでさまざまな交渉の舞台裏に登場してきたワーナーブラザースでもウォルトディズニーでもなくフォックスが一番乗りしたことに関しては、“意外”という印象が強い。
フォックスの参加を発表したソニー業務執行役員常務の西谷清氏自身、フォックスからBDA参加の意思を聞いたのはキックオフミーティング直前のことだったという。
現在、二つの規格がしのぎを削る次世代光ディスクに対して、映画スタジオは特定の規格に対して明らかなコミットメントを出すことは、これまでなかった。唯一の例外は、ソニー自体が親会社となっているソニー・ピクチャーズエンターテインメント(SPE=Sony Pictures Entertainment)だが、いくら業界内で“コロンビア・トライスター(Columbia TriStar)”と名乗っていても、BDを先頭に立って推進している“身内”であることに変わりはない。
西谷氏も「SPEがBDにコミットしても、“業界が動いている”ことにはならなかった。単に身内同士で協力しあっているだけと見られていた」と本音を漏らす。
一度、強いコミットの姿勢を示してしまうと、その後、情勢が変化した時に柔軟な姿勢を取りにくくなる。だから本音ではどちらかの規格に傾いていても、メジャーは、その意志を表には示さないわけだ。「BDAに参加し、フォーマット策定に参加したいと興味は持っているが、実際にBDAに入るところまでは踏み込めないスタジオがほとんど」(西谷氏)
では、なぜフォックスはBDAに参加したのだろう。
フォックスのマイケル・オニール氏は「BDを技術的に深く知ることと、コンテンツベンダーとしての意見をBDのフォーマットに盛り込んでもらうことが目的だ。BD向けにパッケージコンテンツをリリースすることを約束するものではない」と予防線を張っている。だが、それでもBDに対する興味がよほど強くなければ参加には至らなかっただろう。
実はオニール氏はBDAキックオフミーティング直前の週に、静岡にあるソニーのBD-ROM製造ラインを見学している。この時点ではBDA参加の意志は表明しなかったが、その後、急転。参加意思を表明したという。
西谷氏は「オニール氏は元々、技術系の人物だ。生産ラインの完成度や将来性を確認し、その結果としてROM製造面での不安が解消され、BDAへの参加を決めたのではないか」と、ROM製造ラインの完成度の高さが、20世紀フォックスのBDA参加につながったとの見方を示した。
おそらく、実際にはBDAの参加を前提にオニール氏が最終確認として製造ライン見学やBD関連各社とのミーティングを持ったのだろうが、「本当に直前の意思表明で驚いた」(西谷氏)というのは本音だろう。フォックスの参加は、それほど突然のことだった。
フォックスの参加は、BDとHD DVDの業界標準争いにどのような影響を与えるだろうか?
オニール氏が「BD向けパッケージコンテンツの発売を前提とした参加ではない」と釘を刺しているが、業界では“フォックスはBD側でHDコンテンツを開発する”と認識され始めている。加えてソニーがMGM買収に参加したことで、MGMのコンテンツもBDへと流れる可能性が高いと見られている(ただし、ソニーがどこまでMGMのコンテンツビジネスに口を出せるかは、現時点では未確定な部分もある上、BDへのコミットを正式に表明しているわけではない)。
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