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スタジオ音質をコンシューマAV製品に――Analogが400MHz動作の新DSP

» 2004年11月15日 15時58分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 Analog Devicesは11月15日、AV機器向けDSP・第3世代「SHARC」シリーズの新製品「ADSP-21367」「ADSP-21368」の2製品を発表。同日都内で新DSPの製品説明会を行った。

photo AV機器向けDSP・第3世代「SHARC」シリーズの新製品

 SHARC DSPは、大容量オンチップ・デュアル・ポートSRAMブロックと高性能I/Oプロセッサーを組み合わせた独自のメモリ・アーキテクチャを内蔵し、高速演算のための帯域幅を常に確保することでオーディオ信号処理向けに最適化した32/40ビット浮動小数点演算デバイス。その高い処理性能が認められ、ホームシアター向けのマルチチャンネルAVレシーバー(AVアンプ)や高級車用カーオーディオシステム向け、プロユース向けにはレコーディングスタジオコンソールなど幅広い分野でSHARC DSPが“業界標準”となっている。

 また昨年12月に発表された最新の第3世代SHARCシリーズも、ケンウッドやデノンなどさまざまなAVメーカーの製品に採用されている。

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 なぜ、SHARC DSPがこれほどAV製品市場で支持されるのだろうか。

 同社オーディオ・プラットフォーム事業部プロダクトラインマネージャのコリン・ダガン氏は「オーディオメーカーがSHARCプロセッサを選ぶ理由は“音が良くなるから”。32/40ビットの浮動小数点演算処理によるダイナミックレンジが広がりが高品質なオーディオを提供するのに加えて、複数同時処理や7.1chオーディオを96KHzの高サンプルレートで動作できるといったハードウェア性能が高音質を作り出す。また、最新アルゴリズムを市場に迅速に提供している点にも評価が集まっている」と語る。

 今回、第3世代SHARCシリーズに追加された2つの新SHARC DSPは、1チップでさまざまな処理に対応するために最大400MHzの動作周波数を実現。従来、複数個のDSPを使って行った処理を1チッププロセッサに置き換えることができるという。

ADSP-21367 ADSP-21368
ターゲット ホームオーディオ プロフェッショナルオーディオ
動作周波数 400MHz(300MMACs)
On Chip RAM 2Mビット
On Chip ROM 6Mビット
マルチプロセッササポート ×
サンプル・レート・コンバータ 8-ch、128dB 8-ch、140dB
OEM価格(1万個受注時) 29.95ドル 34.95ドル
サンプル出荷 2005年Q1

 400MHz動作は業界トップレベルで、2001年に登場した第2世代SHARC(100MHz)の4倍の性能となる。だがなぜ、オーディオ向けDSPに400MHzという高い動作スピードが必要なのだろうか。

 「3〜4年前は5.1chが普通だったのが、今では7.1chがスタンダードになりつつある。将来的にはチャンネル数はどんどん増えていき、信号処理はプロスタジオレベルの複雑さになる。このようなマルチチャンネル化に伴って、DSPプロセッサーのパフォーマンスもあげていかなければならない。SHARCはムーアの法則と同様に18カ月ごとにパフォーマンスが倍化するという性能向上を行ってきた」(ダガン氏)

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ソフトウェア開発ツール「VisualAudio」

 また同社は、オーディオシステムの開発を簡素化するソフトウェア開発ツール「VisualAudio」も発表。オーディオ製品に必要なほとんどの基本ソフトウェアを備えており、それらをGUIベースの直感的なインタフェースで利用することができる。これは第3世代SHARCシリーズすべての製品で利用可能だ。

 従来の設計開発の複雑さを簡素化し、それにともなうコストとリスクを削減する。オーディオのエンジニアが必ずしもDSPエンジニアであるとは限らない。アセンブラやC言語といったプログラミング言語を理解しなくてもオーディオシステム開発が行えるようにした」(同社)

新DSP搭載製品は来年秋頃、フラットTV向けにも

 ADSP-21367およびADSP-21368は、来年第1四半期からサンプル出荷が開始され、来年夏以降に量産出荷される予定。

 「実際に新DSPが搭載された製品が市場に登場するのは来年の秋頃。ホームシアター用途のハイエンド向けAVアンプなどに採用されるだろう。面白い動向としては、フラットパネルTV製品でSHARC DSPが注目されている点。近年の薄型TVは高画質化するために複雑な画像処理を行うため、オーディオ信号との遅延が発生してしまうという問題が出ている。大容量メモリーを持つSHARC DSPなら、画像処理によるディレイを吸収しながら高音質を維持できる。薄型TVは新しい需要の1つ」(DSPSテクノロジー・グループディレクターの有田省吾氏)

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