ご存じのように低価格で大画面が楽しめるリアプロジェクションテレビ(リアプロTV)は、その奥行きの大きさなどが問題になりにくい米国では大きな人気を集める商品となっている。日本では住宅事情の違いから、リアプロTVよりもフロントプロジェクターの方が高い人気を誇っているが、普及著しい画素型リアプロTVの中でも核となっているデバイスは、DMD(DLPに使われる映像素子)もしくはLCDだ。
ではリアプロTVの中で人気が高い方式は?というと、これがDLPなのである。日本ではカラーブレイク現象や暗部階調の少なさ、それに価格といった問題もあり、(フロントプロジェクターも含めて)家庭向けとしてはあまり一般的ではないDLP方式だが、米国ではDLPの強さが目立つ(DLPについては別記事参照)。
こうした状況に危機感を持ったのか、LCDを使った3板式プロジェクター/リアプロTVを販売しているメーカーが、共同で3板式(3LCD)ならではのメリットを訴えるプロモーション団体「3LCD Group」を結成した。
コストラスト比が高く、画素間ギャップも透過型液晶に比べてずっと小さいDLPが抱えている最大の問題はコストだ。たとえば昨年、一時は市場でかなり大きな存在となっていたSamsung製のDLPリアプロTVが、秋にはソニーの透過型液晶方式(3LCD)のリアプロTVに押され大きくシェアを落とすといったことがあった。その背景には価格がある。
DLPに使われるDMD素子は製造難度が高く、高解像度でクオリティが高い素子を作るのがとても難しい。そこで考えられたのが「Smooth Picture」という技術で、1080p対応の「xHD3」と720p対応の「HD3」がある。
Smooth PictureはDMD素子のミラーを従来の2倍の速度で駆動し、ひとつのミラーでふたつの輝点を表現する技術。DMDのミラーは対角線方向に動くため、Smooth Picture技術が実装されたDMD素子は、ミラーが45度傾けられた菱形の形をしている。
時分割で2つの輝点を表現するため、明るさが半分になるように思うかもしれないが、画素と画素の間にもうひとつの画素ができるため輝点が重なり合い、トータルでの輝度は変化しない。
画素が半分づつ重なり合いながら連なるため、画素間ギャップがほぼゼロとなり、フィルム映写のように滑らかな表現となるのも特徴。Smooth Pictureの名称は、滑らかな質感表現から由来している。ミラー数の2倍の画素を表現できるため、厳しいコスト競争にさらされたリアプロTVでの競争力が高まる。
また、最新のDarkChip 3技術が採用された製品(たとえばHD2++)は、従来よりもミラー間のギャップが小さく、それがコントラストの向上に寄与しているという。素子レベルのコントラストは、DarkChip 2の1500:1から2000:1に向上している。LCDは素子レベルのコントラスト比が500:1程度で、高コントラストはDLPの大きな長所となっている。
xHD3を採用したフルHD対応リアプロTVは、LGとSamsungが今回のCESに出展しており、今四半期中には出荷が開始される。東芝も北米でxHD3を採用した製品を展開する見込みだ。
動作速度が2倍になったのであれば、画素を増やすよりもカラーブレイクを減らす方向で調整して欲しいというユーザーもいるだろうが、ローコスト化を行うにはミラー数を減らす事が何より重要との判断だという。
なお、xHD3、HD3は、基本的にリアプロTV向けに提供するとのこと。フロントプロジェクターに使ってはならないわけではないようだが、マニア指向の強いフロントプロジェクターはリアル画素で対応する方針だ。ただし、現時点でフロントプロジェクターの具体的な製品計画があるわけではなく、市場の伸びが著しいHD対応リアプロTVにフォーカスした製品ラインの作りとなっている。
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