年内に日米ほぼ同時に市場を立ち上げる強気のスケジュールをブチ上げ、全89タイトルの発売予定リストまで公表したHD DVDプロモーショングループ。その中心企業である東芝デジタルメディアネットワーク社の首席技監、山田尚志氏は、年内の発売スケジュールにいささかの不安もないと強くアピール。そして早期立ち上げが可能な要因として、0.6ミリカバー層によるディスクメディアの作りやすさを挙げた。
前回に引き続き、HD DVDについて話を聞いた。
──HD DVDの方が作りやすいといっても、大量に作られるようになればコストは下がるでしょう。またソニーがCinram(プレスメーカー)の施設内にBD-ROM製造ラインを作り、タクトタイム約4秒で動かしていると聞いています。HD DVDのコスト優位性は一番最初だけではありませんか?
「タクトタイムが短いだけでは実際のパフォーマンスはわからないものです。ディスク全面をフルカットしたマスターで、良品が十分な歩留まりで取れるかどうかが重要です。不良が多ければタクトタイムが短くても意味がありません。通常、どんなディスクでも3ミクロン程度のバラツキは出るものですから、BDのシステムでは全品検査をしなければならないでしょう。しかし、コスト的に厳しいROMメディアでそれはできません」。
──東芝は、0.1ミリカバー層のシステムも開発していましたが0.6ミリを選択しました。当時から0.1ミリは無理との考えを持っていたのでしょうか?
「0.6ミリカバー層にしたのは、0.1ミリに取り組んできて、“あぁ、このディスクを安くは作れないな”と直感的に感じたからです。製造が無理というわけではありません。コストをかければ作ることは出来ます。メディア単価の高い記録型ならばそれでもいいかもしれませんが、ROMではコスト増になる要素を徹底的に排除しなければうまくいきません。
一方、HD DVDは複製コストがDVD並みです。0.1ミリシステムには無理があると言わざるを得ません」。
──HD DVDにコンテンツを提供する映画スタジオの中でも、ユニバーサルはBD側に具体的な金額を提示してBD向けパッケージソフトを出すに際しての契約金を要求したようです。結局、BD側はこの話を断ったようですが、彼らはHD DVD側にも同様の話を持ち込んだのではないですか?
「いや、われわれにそんなお金はありません。ワーナーもライバルに塩を送るようなことはしないでしょう。ユニバーサルは以前にも、お金をもらってSACDソフトを発売したことがありましたが、約束の500タイトル発売を達成したらそれまででした。結局、純粋にビジネスに取り組まない限り、うまくはいかないんですよ。
一方、HD DVDに賛同しているワーナー、ユニバーサル、パラマウントは、いずれもHD DVDの特徴を評価してくれた上で参入しています」。
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