先週のニュースでは、インターネットリサーチサイト「C-NEWS」のDVカメラに関するアンケート結果が興味深かった。現在所有するカメラのトップがソニーで4割半ば。欲しいカメラもやはりソニーで7割弱だという。ユーザーを飽きさせないように次々と新しい試みを投入する姿勢が、「ハンディカム」ブランドのブランド価値の維持につながっているようだ。
飽和状態と言われて久しいビデオカメラ市場だが、この結果を見れば、安定した需要の中で“いかにソニーの牙城を切り崩していくか”という業界図式が、あらためて浮き彫りとなった。
全国の大手量販店などのPOSデータを集計する、株式会社BCNが発表した2004年のビデオカメラ売り上げランキングでは、ソニーが他社に倍以上の差をつけて堂々の1位でシェア44.1%。この数字はC-NEWSの所有カメラシェアとほぼ一致する。2位のキヤノン19.9%、3位のパナソニック18.6%でかなり拮抗しており、ほぼ同シェアと言って良いだろう。
一見すると、ソニーの安定1位は揺るがずと見て取れる。だが数年前までは、ソニーのシェアは6割から7割強あったことを考えると、松下電器産業(パナソニック)がV字回服宣言後の猛攻と、キヤノンの写真DV攻撃が、じわじわとソニーのシェアを削り取ってきているのが分かる。
同じく先週の、ソニーが今期営業益を下方修正したニュースでは、ビデオカメラ市場の国内価格下落も要因の一つに挙げられている。C-NEWSのアンケート結果では、DVカメラ購入時の最重視ポイントは「価格」で、4割弱が10万円、およそ半数が10万円以下を購入の目安と考えているらしい。
だがこの価格の目安は、考えようによってはメーカーにとって悪い数字ではない。
現在DVカメラのエントリーモデルは、だいたい6万円台、実売価格で4〜5万円といったところだが、10万円弱出してくれるなら、売れ筋は実売で10万円を切る程度のミドルクラスとなる。映像処理エンジンの1チップ化など、コストダウンの下敷きがうまく回転してくれば、利益が出ない数字ではない。
一方、ユーザーの立場から各社のラインナップを俯瞰(ふかん)すると、エントリーモデルはあきらかに機能を絞りすぎていると感じる。CCDのピクセル数が低かったり、静止画撮影機能がなかったりと、「もしかしたら必要かも」という部分が、なかなか思い切れない。
どうせ10万円以内に収まるなら、あと2万円ぐらい出してもミドルクラスを買っとくか、という気持ちになる。またエントリーモデルは、デザイン的にもっさりしているのが筆者は一番気になるところだ。
デザインという面では、最近のビデオカメラは前モデルから大幅に設計やデザインを変えないことで、パーツの量産メリットをうまく引き出している面も見逃せない。買う側にとっては、新モデルでは革新的デザインのものが欲しいところだが、価格との折り合いを考えると妥協点といったところだろうか。
個人的にはC-NEWSのアンケート結果で、購入する際に重視したいポイントとして「デザイン」が入っていないのは意外であった。だがすでに家電として認知されているDVカメラには、もはや先鋭性は必要とされなくなっているということなのかもしれない。
DVカメラの行き詰った状況は、別の見方をすれば、次世代ビデオカメラへの転換待ちということにもつながってくるだろう。もっとも身近な次世代カメラとして、DVDビデオカメラの可能性を考えてみたい。
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