近く正式規格として承認されるDVDフォーラムの2層式追記型DVD規格――「DVD-R DL(Dual Layer)」は、新たな記録方式を追加するなど、製品化で先行するDVD+RWアライアンスのDVD+R DLとはひと味違った工夫が施されている。
DVD-R DLは、記録後に市販の片面2層DVD-ROMと高い互換性を持つことが特徴だ。記録容量は片面2層で8.5Gバイト、記録速度は2倍速と4倍速の2種類が規格化されている。ここまではすでに公表されているが、2層DVD-ROMとの物理的互換性を維持するために、工夫を施した記録方式を新たにサポートするなど、一風変わったアプローチがとられていることも特徴だ。
具体的には、従来から使用されてきた「ディスクアットワンス(Disc At Once:DAO)」、「インクリメンタルレコーディング」というシーケンシャル記録の方式に加え、「LayerJump Recording」と呼ばれる新しい記録方式が追加されたのだ。
LayerJump Recordingは、「Fomart4RMD」とも呼ばれ、DVD-R DLのために開発された記録方式である。データを均等分割して、内周から順にレイヤ0とレイヤ1の2つの記録層に対してコの字形にグルグルとデータを記録していく大変ユニークな記録方式だ。
なぜ、このような記録方式を追加する必要があったのだろうか。DVD-R DLの開発に深く携わったパイオニアに、その規格コンセプトや特徴、DVD+R DLとの違いなどについて話をうかがった。
「DVD-R DL」と「DVD+R DL」は、同じ記録容量/同じ特徴を持つメディアといえる。この“似た同士”の関係は、片面一層(シングルレイヤ)のDVD-RとDVD+Rの時も、まさに同じ状況であった。おそらく、両者の違いを明確に説明できる人は少ないだろう。もっともシングルレイヤにおいては基本的な開発コンセプトが同じなので、その違いを説明できなくても当然かもしれない。
だが、DVD-R DLとDVD+R DLの関係は、ちょっと事情が異なるようだ。というのも、DVD+R DLでは、基本的にシングルレイヤDVD+Rメディアの延長線上の記録方式をそのまま用いるのに対し、DVD-R DLでは、従来の記録方式に加え、LayerJump Recordingという新方式を“あえて”導入する。
なぜなら、再生専用メディア(DVD-ROM)との互換性を維持するために「奥側の層(レイヤ1)を書くときに、手前側の層(レイヤ0)が記録済みかどうかで、奥側の記録管理が変わる」(谷口氏)からだ。
「DVD-R DLでは基本的には、必ずレイヤ0から記録するように考えてあります。今回は終末まで記録したら、先頭へ戻るオポジットトラックパスのみを規定しています。先頭へ戻らないパラレルトラックパスを採用すると、対応メディアが別途必要になるので、市場の混乱を避けたかったからです」(谷川氏)」
また、DVD-R DLの開発コンセプトを谷川氏は、「すべてのフォーマットに対して適用できるように、そして、民生のプロダクトとして生き残れるようにという観点でもって、開発した」と説明する。
谷川氏によると、DVD+R DLは「DVD-Videoでの記録など、既にオーサリングされているデータの記録にフォーカスしたのではないか」という。つまり、「カンパケをポーンと移す」ことを主眼においているのでは、というのだ。
というのも、日本国内は別として、海外ではVR記録そのものがそれほど普及していない。つまり、DVD+VRだけでなくDVD-VRもそれほど普及してないというわけだ。しかし、国内では、すでにDVDレコーダが大きな市場を形成しており、DVD-VRの普及度は、高いといえる。しかも、コピーワンス放送で使用されている「放送フラグ」もすでに導入済みだ。
「デジタル放送が始まって放送フラグが入ってきために、今までのDVD-Video(ビデオフォーマット)では記録できなくなってしまいます。そうなると、CPRMなどに対応したフォーマット、つまり、VR記録が今後の主流になるだろうと考えています」
「現存している商品の延長線上に位置しながらも、エンドユーザーがこれを購入したときに使いやすいと感じてくれる――、そうした思いからDVD-R DLを開発したのです」(谷川氏)
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