DVD+R DL登場時に多くのメディアなどで解説されたが、DVD-R DLなどの2層記録メディアが2層のDVD-ROMとの互換性を実現するためには、一工夫が必要になる。というのも、2層のDVD-ROMには、必ず2つの記録層にデータが記録されているが、2層記録メディアでは、どちらかの記録層だけにデータを記録しておく、ということが可能だからだ。
そこで、DVD-R DLでは、単層メディアも使われているシーケンシャル記録(レイヤ0のスタートアドレスから記録を開始し、ミドルエリアを介して、レイヤ1のリードアウトまで書き込んでいく方式)に加えて、「LayerJump Recording」(Format4RMD)という方式を設けた。
この方式では、記録時にレイヤ1とレイヤ0をあたかも「コの字」の様に移動しながら記録を行うことが最大の特徴だ。これによって、2層DVD-ROMとの物理記録ベースのレイアウト互換を実現している。
「2層のDVDはレイヤ1が書かれていないと、レイヤ0だけ書いても読めない――というのは、ロジカル(論理規格担当)の担当としては、センセーショナルでした。そうしたら、フィジカル(物理規格担当)の人間にアッサリと、それがROMのスペックだからといわれました。“既存のROMとの互換性を確保するには、ここ(2層全部)を埋めないとだめだよ”というわけです」(谷川氏)
しかし、2つの記録層にデータを記録するにしても、単純に2層全部へ均等に記録を行うというのはあまりにも無駄が多い。「ユーザーニーズから考えると全部埋めることは、あり得ない」(谷川氏)
ROMとの再生互換性を確保するには、ダミーデータを記録して埋めるということが考えられる。「しかし、単純にミドルエリアを前に移動させて、残りはダミーデータで埋めると、記録エリアに無駄が出てしまいます。では、その無駄を省けないのか、というところから、このLayerJump Recordingという記録方法がでてきました」(谷川氏)
LayerJump Recordingは、一見複雑な記録法に思えるがメリットもある。DVDレコーダやカムコーダなど、いつ記録を停止するかがあらかじめ決まっていないリアルタイム記録デバイス、つまり、任意のタイミングでファイナライズを行うことが求められるデバイスにおいては大きなメリットを享受できる。
「DVDレコーダやカムコーダなどでは、ある一定のインターバールを持ちながら記録を行うしかありません。クロージングタイム、つまり、ファイナライズ時間をいかに短くするかということ考えると、この方法が一番良いだろう、というところから、LayerJump Recordingが、発想されたといえるかもしれません」
「2層記録メディアをカムコーダやレコーダで使おうと考えたときに、片面の記録層のみを記録した状態では、取り出せません。ROMとの再生互換性を維持するためには、片面のみではなく、全部を記録しなければならないからです。全部記録してしまったら、追記ができなくなります。これを何とか解決しようとしたのが、LayerJump Recordingという書き込み方式です」(谷川氏)
DVD-R DLでは従来からあるディスクアットワンスとインクリメンタルレコーディングに加えて、新設されたLayerJump Recordingという、3種類の記録方式を使い分けることになる予定だ。このため、従来の(シングルレイヤの)DVD-Rとは、記録方式の使い方にも若干の変更が加えられている。
まず異なるのは、マルチボーダーと呼ばれる、CD-Rにおけるマルチセッションのような記録を行える方式を、LayerJump Recordingのみに限定したことだ。
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