ITmedia: しかし、われわれ一般人は、どうしても「本当にそんな1個のユニットで、全方位から音が感じられるものなのか」といぶかってしまいがちです。
中道氏: いろいろ研究した結果、人間の聴覚では耳の構造もあり、後方はそれほどでもないのですが、前方から来る音に対してはかなり感度が高い。そこで、フロントを構成する3chに関してはリアル出力を行い、リアのみバーチャルで生成すればいいという結論に到達しました。
ITmedia: リア用スピーカーは斜め前方に向けていますが、これは反響音を利用するためではないのですか?
中道氏: いや、NIROシリーズでは反射にはいっさい頼っていません。反射を使うと部屋の環境に左右されてしまいます。この製品では、実は壁からの反射がない環境が最も理想的なんです。例えるなら、屋外のような。つまり、家具がまったくなく、壁に囲まれた四角い部屋よりも、むしろ、現実的なリビングルームのように、壁にはカーテンのかかった窓があったり、物体が雑然と置かれた部屋でかまわないんです。
ITmedia: リアのバーチャル生成の仕組みはどうなっているんでしょう?
中道氏: ほとんどのバーチャルサラウンドでは、多少の差はあれ、頭部伝達関数(HRTF)をベースにしています。ただし我々は、その数式をゼロから作り出しました。これがたいへん(笑)。まず、巨大な箱、ドームをつくって、その内部へB&Wの小型スピーカーを260個並べ、測定用ダミーヘッドでデータをとるところから開始。データの解析に3〜4年かかりましたが、さらに、それをもとにプログラミングを行わなければならず……。でも、こうした苦労により、独自のS.I.P.ソフトウェアが実現できたわけです。
ITmedia: では、リア用ユニットが斜めを向いているのは、特に意味はないんですか?
中道氏: いや、あの微妙な角度が重要ですね。このスピーカーレイアウトとS.I.P.の連携により、比較的広い、3人くらいまで同時に視聴可能なリスニングエリアを確保していますから。
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