1月17日、マーク・ジェン氏のGoogle社員としての初日は、同氏のBlog「Ninetyninezeros」のデビュー日でもあった。同氏はこのBlogを、Google社員としての体験を記録する個人的なジャーナルとして利用するつもりだった。このとき、Googleへの在籍が非常に短いものになるとは知るよしもなかった。
その次の週、GoogleのAdSense広告部門でアソシエイトプロダクトマネジャーを務めていたジェン氏は、イントラネット、仕事用のノートPC、販売会議、報酬など、いろいろな話題に関して新しい雇い主を遠慮なく賞賛し、批判した。
同氏は単純に、このBlogに興味を持つのは主に友人や家族だろうと思っていた。だがこのBlogは非常に有名になった(1日のユニークビジター数はおよそ6万人に上った)。同氏が以前に書いていた技術系Blogとは大違いだった。以前のBlogはGoogleに入社してサンフランシスコに移る前、Microsoftのレドモンド本社で18カ月間働いていたときに公開していたものだ。同氏はすぐに、Google社内の生活に関心を持っている人が「Blog界」にたくさんいることに気付いた。
やがてGoogle――皮肉なことに、人気のBlogサービス「Blogger」を保有している――の上司もNinetyninezerosを読んでいることが分かった。1月26日、ジェン氏はBlogの中で、Googleが財務や製品に関わる機密情報と見なしている内容を削除するよう求められたことを明かした。その後同氏は1週間にわたりBlogを更新しなかった。ハイテク業界では、同氏の運命をめぐって幾つもの噂がささやかれた。2月9日、ジェン氏はついに、入社してから11日後の1月28日付でGoogleから解雇されたこと、自身のBlogがその「直接的あるいは間接的」原因だったことを明らかにした。Googleは解雇の理由を説明しなかったとジェン氏は言っているが、もしBlogが原因なら、同氏は増えつつある「Blogの内容が原因で職を失った人たち」の仲間入りをしたことになる。
ジェイ氏はミシガン州出身で、2003年にミシガン大をコンピュータ工学の学士で卒業した。現在は新しい職を探しているところだ。Googleは、同氏が自社の従業員でなくなったことを認めているが、それ以外のコメントを拒んでいる。だが今回のIDG News Serviceの独占インタビューの中で、ジェン氏はGoogleの最も悪評高いブロガーとしての経験から学んだ教訓、自身のミス、今後の計画について語った。同氏の話しぶりは穏やかで丁寧で、またよく笑い、つらそうな様子は見られなかった。
――あなたが今回学んだ教訓で、同じように個人のBlogで仕事のことを書いている人に教えられることはありますか?
ジェン氏 私は今回の件で幾つかの教訓を学びました。まず、Blogは公共の広場であり、自分が書いた考えが思ったより多くの人たちに読まれるということです。これは重要な教訓です。もう1つ学んだのは、Blogを書く前に、雇い主との間で書いていい(と雇い主が思っている)こととダメなことを明らかにしておくことです。勤務先に明確な方針があるかどうかを確認するか、何が良くて何が認められないのかを上司と詳しく話し合う必要があります。それから企業文化に敏感になることです。この点は私の最大のミスの1つでした。あの時は本当にGoogleのやり方に不愉快になりました。今振り返ってみて、もう少しその点に気を付けるべきだったと自覚しています。これらは私が学んだ大きな教訓であり、今後はこれを踏まえていくつもりです。
――次の職場での体験もBlogに書くつもりですか?
ジェン氏 Blogは続けるつもりですが、勤務先に特に決まりがあれば、内容はそれに合わせます。私がオープンな広場を持つことを、会社が気にせず積極的に認めてくれるのなら、何でも思ったことをBlogに書きます。ですが、Blogに関して具体的な方針のある会社で働くのであれば、もちろんその方針に従います。ただ、今後もBlogはやっていきます。とても面白い分野ですし、Blogを中心に巨大なコミュニティーができあがっています。そこには大きな価値があります。
――あなたのBlogのトラフィックは?
ジェン氏 減ってきています。ちょうどBlogでトラフィックのことを書こうとしていたところなんです。(Googleから解雇されたことについての)ニュースが流れ出した1週間ちょっと前がピークで……(1日で)10万件のアクセスがありました。合計で40万件に近づいています。
――解雇について、Googleは何と説明したんですか?
ジェン氏 率直な答えはもらえませんでした。公式声明あるいは私が解雇された理由を求めたのですが、そのような回答はありませんでした。もちろん、理由の説明を拒否するのは、彼ら(Google)の権利の範囲内です。私はカリフォルニア州の随意雇用者(雇用主が自由に解雇できる)でしたから、彼らは私に解雇の理由を説明する必要がないのです。クビになったことには驚きました。解雇はショックなことです。
――でも、あなたはBlogが(解雇の)大きな要因だったと思っているのでしょう?
ジェン氏 その通りです。私のBlogが直接あるいは間接的に解雇の理由になったのです。
――Googleは、「あなたの能力に原因があった」「あなたはこの仕事に合わないと思った」といったことは言わなかったのですね?
ジェン氏 そのようなことは言いませんでした。私の能力の話はまったく出てきませんでした。それは問題ではなかったのです。
――何らかの方法でGoogleに賠償を請求するつもりは?
ジェン氏 ありません。興味ないです。生産的とは思えませんし。
――では、この件はもう終わりで、あなたは次に向かっているということですね?
ジェン氏 そうです。
――今現在の状況についてどう感じていますか? ひどく動揺しているとか、落ち込んでいるとか、あるいは面白がっているとか? 今回注目を浴びたことが、仕事を探す上でプラスになると思いますか?
ジェン氏 最初はちょっとショックで、対処に少々時間がかかりました。ですが今はむしろ、ただ進むだけです。新しい仕事に関して多くのいいきっかけができましたし、選択肢はたくさんあります。今回の件から教訓を学び、そしてもっと大きな、もっといいものへと進んでいるところです。
Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR