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エアコンがパネルを着替えたら?――三洋の“デザイン家電”戦略(1/2 ページ)

» 2005年04月06日 06時11分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 三洋電機が2月に発売したカラード・エアコン「四季彩館」が好調だ。機能と価格の両面でハイエンドに位置する製品ながら、シンプルなデザインとカラーバリエーションで人気を集め、2-3月期には同社のエアコン販売台数の2割を占めたという。他社に先駆けて“デザイン家電”に着目した三洋電機が、自社の「デザイン戦略」を明らかにした。

photo 「四季彩館」。パネルの“着せ替え”も可能で、季節や気分によって色を変えるなど、インテリアと合わせたカラーコーディネートが楽しめる

 「四季彩館」は、「エアコンは白」という常識を覆す7色のカラーバリエーションを持ち、しかもパネルの“着せ替え”にも対応するユニークなエアコンだ。同社が「インテリアに馴染む家電」を目指して昨年から推進している「デザイン プロジェクト」の3番目の製品となる。第1弾は、昨年11月発売した薄型テレビ「CAPUJO」、第2弾はマッサージチェアの「ELSEDIA」だ。

 三洋電機の井植敏彰常務は、プロジェクト立ち上げの経緯について、「日本の家電メーカーは、ユーザーのニーズに合わせて機能を付け足していく“不満解消型”のアプローチは得意だが、ユーザー調査の結果をみると“機能は十分だが、格好が悪い”という声が目立つ。これはビジネスチャンスになると思った」と説明する。

 「世の中にインテリアとの調和を指向した製品は数多いが、家電に関しては遅れているのではないか?」

photo 三洋電機の井植敏彰常務

 プロジェクトから生まれた製品は、いずれも家電としての機能を主張しないシンプルなデザインが特徴だ。たとえばCAPPUJOは、余計な装飾を省いた“つるん”とした外観により、テレビそのものがインテリアになることを目指した。またELSEDIAは、エアバックやコントローラなど、マッサージチェアの機能を感じさせる要素をすべて外観から排除し、インテリアに溶け込ませるためのデザインを指向している。

photo 「CAPUJO」(左)と「ELSEDIA」。CAPUJOは、店舗や家具などを手がけるデザイナーのグエナエル・ニコラ氏がデザインしたことでも注目を集めた

部屋の空気に合うエアコン

 エアコンを手がけるにあたっては、「それぞれの部屋が持つ空気」を重視した。インテリア性の高い外観にするのはもちろんだが、一口にインテリアといってもさまざま。たとえば和室やカントリー調の部屋では、最新の電化製品があるだけで雰囲気を壊してしまう可能性がある。実際、和食の店などでは、エアコンに竹格子を被せて隠している例も多く、またモダンな店舗で黒に塗装されたエアコンを目にすることもある。

 「以前、ある店舗デザイナーに“どんなエアコンがほしいか”と訊ねたところ、“つるつるのエアコンがいい”と言われた。理由を訊ねると、黒く塗って存在を消すことができるからという。悔しい思いをした」(井植氏)。

 「四季彩館」では、まず外観をシンプルにした。デザインを担当した同社ホームエレクトロニクスグループHAカンパニーの関康一郎チーフデザイナーによると、前面パネルがフラットで、上下左右が対称になる“全方位シンメトリー”のスタイルが1つのポイントだという。

photo デザインを担当した同社ホームエレクトロニクスグループHAカンパニーの関康一郎チーフデザイナー

 一般的なエアコンでは、室内の空気を取り込むため、前面に格子状のルーバーが付いているが、それでは見栄えが悪い。そこで、運転時に前面パネルを2〜3センチ本体から浮かせる機構を組み込み、その隙間から吸気する仕組みとした。当然、製造コストはアップするが、動作時にも正面はフラットなまま。外観を損なわない。

 2つめのポイントは“カッティング・エッジライン”。「全体的に角を落とすことにより、部屋に圧迫感を与えず、エアコンそのものを軽く見せる効果がある」という。

photo 「四季彩館」のデザイン画。コンセプトは「SIMPLE IS BEST」だという。適当な線を組み合わせただけのようにも思えるが、「曲線の一本一本にデザイナーの思いが込められている」(関氏)
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