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「着うたやiPodのヒットは歓迎すべきこと」――「OnGen」が目指す音楽配信のカタチ(後編)インタビュー(1/2 ページ)

» 2005年05月02日 14時11分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 「まだ音楽配信はメジャーな存在ではない。音楽というコンテンツの魅力を伝え、それを購買に結びつけたい」と「OnGen USEN MUSIC SERVER(以下 OnGen)」の方向性を語るUSENの下浦敦史氏。正攻法ともいえる考え方だが、そこには大量のコンテンツを自ら保有していないプラットフォーマーであるがゆえの苦悩も垣間見える。

photo OnGen事業 プロジェクトマネージャー 下浦敦史氏

 自分たちでコンテンツを持つレコード会社ならば、例えばCD発売前に携帯と音楽配信で先行リリースを行うといった戦略を自ら立案して実行することも可能だ。しかし、主に配信のみを行う事業者では、まずレコード会社側との配信を巡る折衝が必要となる。

 しかもそれ以前に、レコード会社側が音楽配信に消極的であれば、配信自体が行えないという事態も起こりうる。同社にとってのコンテンツ提供元、レコード会社の音楽配信への姿勢に変化は起こっているのだろうか。

レコード会社側の変化も感じるが、環境作りはまだまだ

 「2000〜2001年当時と今を比べると、音楽配信サービスがひとつの流通経路としてレコード会社に認められつつあることは実感しています。基本姿勢として否定的な見解を示すところはないといえるでしょう。当社が権利を保持している楽曲以外に配信できる曲数もだいぶ増えてきましたし、外資系レコード会社が継続的に楽曲を提供してくれていることも、サービスの安定運用という点では大きな意味を持っています」

 Moraの赤坂氏と同じく、下浦氏もレコード会社が音楽配信について積極的な姿勢を見せ始めていると述べる。だがその一方で、配信に際しての技術的・事務的な煩雑さが問題として浮上してきているという。

 CDパッケージの場合にはマスター版を制作した後に、それを複製すれば流通経路に乗せることができる。だがデータでの扱いになる音楽配信の場合には「どの段階でデジタル化するか」、「どうした形態(データ形式など)でレコード会社が配信事業者に提供するか」などが現状では各社バラバラなのだ。

 「CDを渡されて“これでお願いします”ということもありますし、WMAのファイルで渡してくれる場合や、曲・歌・メタ情報のデータを分けた状態で渡してくれる場合もあります。ユーザーに向けた配信を行う事業者としては、標準化が進むとうれしいのですが……」

「着うたフルやiPodのヒットは歓迎すべきこと」

 「インターネットの全利用者のうち90%以上は日常的に音楽配信サービスを利用していないという調査結果もありますが、今後の見通しについてはまったく悲観視はしていません」

 着うたフルやiPodのヒットは、既存の音楽配信サービスにとって“ライバルの成長”と見られがちだが、下浦氏はそうしたヒットこそが音楽配信サービスが本当に普及するための下地に見えるという。

photo 今年1月に発売されたiPod shuffle。日本国内ではiTMSが使えないにもかかわらず、発売直後は入手困難になるほどの人気となった
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