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「iTMSも日本のルールで」――JASRAC、ネット配信に期待

» 2005年05月18日 20時33分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 JASRAC(日本音楽著作権協会)は5月18日、2004年度の事業報告を行い、使用料徴収金額や著作権管理、コンテンツ流通促進の取り組みなどについて説明した。

 2004年度における使用料などの著作権料徴収額は約1108億円。過去最高となった2003年度(約1094億円)をさらに更新したが、最も金額的に大きいCDからの徴収金額は5年連続で低下しており、DVD販売やCM/放送からの徴収、着うたなどに代表されるインタラクティブ配信からの徴収額増がCDの落ち込みをカバーした格好だ。

 常務理事の加藤衛氏は「DVDについては旧作のDVD化が一巡したほか、CD売り上げの低迷も引き続いており、暫定だが2005年1-3月期の徴収額はCD、DVDのいずれも低下している」と過去最高額を更新しながらも現状を“階段の踊り場”と表現し危機感を表す。しかし、「音楽の流通形態が変化している。新しい流通形態に見合った管理・分配を行っていきたい」とも述べ、“新しいコンテンツ流通形態”の伸びを期待する。

 新たなコンテンツ流通である着信メロディや着うた/着うたフル、PC向け音楽配信、有料ストリーミング配信などが含まれる「インタラクティブ配信」の徴収額は92億7300万円と前年比112.9%の増収。なかでも着うた/着うたフルが含まれる「オリジナル音源着信音」は前年比484.4%、PC向け音楽配信などが含まれる「その他音楽配信」も127.5%の伸びを見せており(CD販売からの徴収金額は前年比94.7%の減少)、加藤氏の発言を裏付ける。

 その内訳を見ると、現時点では「インタラクティブ配信」の徴収金額のうち9割以上が着うた/着うたフルという状態だが、協会では「iTunes Music Storeの登場も歓迎したい」(常務理事 菅原瑞夫氏)と“PC向け配信サービス”の拡大にも期待を寄せる。

 iTMSについては、2年ほど前からアップルがJASRACへ相談に来ていたとのことで、「当初は2005年4月ないし5月の開始を目指していたようだが、しばらく延期されているようだ。日本にサービスの拠点を置き、日本のルールで進めていくということで相互理解を得ている」(菅原氏)という。

 この「相互理解」とは、“iTMSも国内の配信事業者と同じ条件でサービスを行っていく”という意味で理解して良さそうだ。「ダウンロード型ならば、1曲あたり7.7%もしくは7.7円の使用料を徴収するというルールはいかなる事業者においても変わらない」と菅原氏もコメントしている。iTMSは比較的ゆるいDRMが特徴だが、菅原氏は加えて「ダウンロード型ビジネスで大切なことは、コピーコントロールの問題をクリアにすること」とも述べており、iTMSが既存の国内サービスと同等のDRMを備える可能性も否定できない。

 (※上記の金額は包括的利用許諾契約による場合。詳細はこちらを参照のこと)

 なお、iPodからも私的録音録画補償金を取るべきだとする意見書を関係団体と合同で文化庁へ提出した件については、「iPodについては法改正するまでもなく、現行法規の対象に追加できるはず。主たる目的が音楽録音である以上、現行法制度の追加対象としてもらいたいし、そう理解してもらえると考えている」(常務理事 泉川昇樹氏)と同様の主張を繰り返した。

 しかし、PC内蔵のHDDなど汎用機器からも補償金を取るべきかについては「汎用性のある機器については、十分な議論を重ねるべき。しかし、PCで音楽を録音している人の数が多いのも事実であり、見過ごすわけにはいかないと考えている」(泉川氏)と、慎重な姿勢を見せながらも、対象とできるならば対象に含めたいという考えを示した。

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