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» 2005年05月31日 23時59分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:オーディオと音楽の本質 (1/4)

近年のオーディオ製品は高機能/高付加価値商品が主流。評論も機能/スペックにフォーカスしたものが多い。だが、本当にそれでいいのか? 音楽理論も専門分野というデジタルメディア評論家・麻倉怜士氏が“オーディオと音楽の本質”を語る。

[西坂真人,ITmedia]

 近年、オーディオも機能/スペック偏重の傾向が強まり、アンプもマルチチャンネルのAVアンプ、CDプレーヤーもDVD/SACD/DVDオーディオなど多メディア対応のユニバーサルプレーヤーなど高機能/高付加価値商品が主流になっている。オーディオの評論も機能/スペックにフォーカスしたものが多い。

 だが、本当にオーディオはそれでいいのだろうか?

 デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回は音楽理論も専門分野の1つで、大学(津田塾大学)で音楽の教べんもとっている麻倉氏に、“音”ではなく“音楽”という観点からみたオーディオのあり方――“オーディオと音楽の本質”について語ってもらった。

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――自身のオーディオ論について聞かせてください。

麻倉氏: エジソンがレコードを作ってから以降、オーディオは“音のカンヅメ=パッケージメディア”をどう再生するかがポイントになっています。つまり「原音再生」が目標になっているのです。その究極の原音を求めた例としては、日本ビクターの「生演奏とのすり替え実験」などが有名ですね。でも、原音再生の“原音”って何でしょうか?

 私が考えるオーディオは、“音楽”を再生する道具であるということ。音楽を聴くためにオーディオはあるのです。さてその“音楽”とは何かというと、演奏の状況/解釈/特徴にはじまり、さらにもう少し踏み込んで、音楽とはどういうもので、誰が作曲して、どういう思いで、どういうシチュエーションで、どういう技法で、何を訴えたいために作ったのか、というところまで追求してみるのです。

 機器設計の立場では、音の原点ともいえるミキサールームの音のレベルにいかに近づけるかが大事ですが、われわれユーザーの立場からオーディオを楽しむときには、その先に「音楽そのもの」というものがあるのではないか。オーディオの論議で今まで欠けていたのはこの“音楽そのもの”ではないかと考えたのです。周波数特性が良い、ダイナミックレンジが広い……といった“音”そのものもの論議はあるのですが、作曲家のパッションやコンセプトがどのくらい感じられるかといった“音楽”そのものの論議はこれまであまりなされていませんでした。

 SACDやDVDオーディオの登場で、演奏会場の“空気感”まで伝わるようになりました。そうなるとオーディオも、「いかに音楽の感動を伝えてくれるか」が、メルクマールになる時期がそろそろきているのではないでしょうか。

 私がオーディオを選ぶ時は、クオリティもさることながら、その音に「音楽性」があるかどうかを、最大のポイントにしています。音楽性とはちょっとわかりにくい概念ですが、その音楽に込められた作曲者の思い、コンセプト、演奏家の解釈、音楽的意思……などをきちんと表現する力があるかということです。それが、「音楽再生装置」としてのオーディオではもっとも大切なことなんですね。単に周波数特性が良いとか、ダイナミックレンジが広いというだけでは、その目的には不十分なのですね。CDプレーヤーのソース機器、アンプの信号処理/増幅機器、スピーカーの電気/振動変換機器のそれぞれのステージで、「音楽性」が必要とされてきますね、

“音楽”とは?

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