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2025年、月面基地に人型ロボットが住む――?

» 2005年06月17日 20時17分 公開
[IDG Japan]
IDG

 日本は月面基地の建設を支援し、2025年頃までに今の人型ロボットを進化させたバージョンをその基地に住まわせたい考えだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のトップはそう語っている。

 この考えはただの空想ではない。元NTTドコモ社長、現在はJAXA理事長の立川敬二氏が率いる「JAXA Vision 2025」と呼ばれる20年計画の一環だ。

 この計画の一環として、日本は高度なロボット技術を使って月面基地の建設を支援する。また、ホンダのASIMOやソニーのQRIOなどの人型ロボットの進化版が、人間が活動できない月面の環境で宇宙飛行士の代わりに働くかもしれない。同氏は最近の取材でこう語った。

 こうしたロボットは、望遠鏡の建設や鉱物の探査・採掘などの仕事をするだろうと立川氏。

 「日本のロボット技術は月で大きな役割を果たすと思う。われわれの大きな貢献の1つとなるだろう。ロボットが人間に代わってできる仕事があれば、その仕事はロボットがやるだろう」(同氏)

JAXA長期ビジョンに描かれた将来の月面探査

 立川氏の計画は、2004年1月に米ジョージ・ブッシュ大統領が、日本などのパートナーと協力して2020年までに月面基地を建設し、それを有人火星探査の足場にすると決定したのを受けてのもの。

 この計画は、そのような基地の建設を長年夢見ていた日本の琴線に触れた。

 ロボットおよびロボット機器のほか、日本のハイテク大手は宇宙で利用するための、より現実的なバージョンの製品も開発するかもしれない。

 「ホンダは月面走行用の自動車を開発するかもしれない。地球上で作られている多くの製品は、月面で動作するよう適応させることができる」と立川氏。

 日本は既に、宇宙への野心に必要となる技術の多くを有している。有名な人型ロボットに加え、日本は宇宙での建設作業に使うロボットアームなどの機器でも先頭に立っている。

 NECなどの日本企業は、実験的な「ロボット衛星」を開発している。ロボット衛星は、ほかの衛星の修理や燃料補給などができる。東芝は、1000億ドルの国際宇宙ステーション向けに幾つかの部品を供給している。同社が供給する部品には、非常に精密な9.7メートルロボットアームなどがある。

 日本の宇宙計画は1969年、米国の宇宙飛行士ニール・アームストロングが月面に降り立った数カ月後に立案された。1990年代後半に、日本の主導的なシンクタンクは、2020年までに日本の前哨基地を設置するためのロボットと資材を運ぶロケットを100基以上打ち上げるよう提案した。

 しかしこの提案はコスト的な理由から退けられた。その後間もなく、日本は3基の衛星の打ち上げに大失敗し、そのロケット技術に懐疑的な目が向けられるようになった。

 JAXAの年間宇宙予算はわずか15億ドル程度、米航空宇宙局(NASA)の10分の1だ。日本の宇宙計画は幾度かの失敗の後、米国にリーダーシップを期待してきた。立川氏の夢が実現するかどうかは、米国がこれからも月面へ帰ることに力を入れ続けるかどうか次第かもしれない。

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