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並べてわかった液晶テレビ選択の“ツボ”特集:夏ボで狙いたい液晶テレビ(2/3 ページ)

» 2005年06月22日 01時50分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 一方、バリエーション展開のできないメーカーは、価格競争という点で少々不利な立場になりそうだ。強いブランド力がなければバリエーション展開するメーカーの上位モデルと価格で競合するのは難しく、機能、性能面で妥協をしていないはずの製品を、他社の下位モデルと価格面で競合させざる得ない。逆にいえば、買う側にとってはありがたい製品となるだろう。

 しかし、選択肢は広がったものの、選択に迷う要素も増えてきた。複数ラインアップのあるメーカーの製品では、価格差がどこに反映されているかを見抜く必要に迫られるし、必要な機能を望むと上位モデルになってしまいがちだ。細かな部分でも、何が必要で、何が必要でないかを、しっかり見極めて製品を選択する必要が出てきたといえる。

 このような流れの中で、俄然買いやすくなったのが26型、32型といった製品だ。プラズマやリアプロジェクションテレビを併売するメーカーも「32型までは液晶テレビ」と位置付けているため、競合が多い。単にインチあたりの価格という点では、22〜23型クラスの方がお買い得感があるが、このサイズになると機能面での妥協が多く見られるようになり、購入には割り切りが必要になりそう(この点は後述する)。割安感があり、また画質や機能面まで考慮して液晶テレビを購入するとなると、現在は26〜32型クラスが最適といえるのではないだろうか?

 約3週間かけて掲載してきた「夏ボで狙いたい液晶テレビ」特集では、主要メーカーの2005年春/夏モデルから26型を5製品集めてみた。これらの製品は、32型、37型といった製品との共通点を多く、より大画面の液晶テレビ購入を検討している人たちにも十分に役立つはずだ。最後にまとめとして、各製品を横並びに見ていきたい。

どの製品もHDソースの視聴を基本に

 すべての製品に共通しているのは、レビューで繰り返し触れてきたように、HDソースの視聴を基本としない限り、26インチというサイズやHD対応パネル(5製品すべて1366×768ピクセル)を活かすことはできないということだ。時期柄、地上波デジタルに備えて夏のボーナスでテレビを買い換えたいという人も多いだろうが、当面はアナログ放送の視聴が中心になるのなら、どの製品を購入してもがっかりしてしまう可能性がある。

 地上波デジタル放送が既に視聴できる地域でも、現状はSD映像を放送局側でアップスケールした番組の比率が高い点に注意したい。この場合、放送局側のアップスケール処理にも画質は依存するが、デジタルチューナー内蔵の4製品は全て、その映像に違和感を感じることが多かった。既に地上デジタル放送が受信できるからといって、単純にブラウン管より高画質になるとは言い切れないのだ。

 PC用ディスプレイでブラウン管から液晶への移行を経験している人は理解できるだろうが、最終出力デバイスが液晶パネルに変わると、同時期の製品であればメーカー間の画質差は小さくなる。今回取り上げた5製品は全てパネル解像度は同一。ブラウン管と異なり、画素が独立しているため、解像感に関してはほとんど変わらない。たとえば地上波デジタル放送に対応した4製品(バイ・デザインを除く)において、HD映像を視聴する限り、大きな不満を感じる製品は存在しなかった。

 もちろん、発色やコントラスト、反応速度といった点は採用している液晶パネルにも依存する。また視野角は完全にパネルの性能になるのだが、取り上げた5製品の中で、視野角の広いIPSパネル採用を公式に唄っているのは松下の「TH-26LX500」のみだ。しかし、実際に比較してみると、この製品だけがとくに優れているという印象は受けない。テレビ画面の内容をきちんと把握できる角度で見るのであれば、どの製品でも画面が白っぽくなって見にくくなることはなかった。

 発色やコントラストに関しては、パネル性能以外に映像回路の影響も大きい。ここは、製品ごとの味付けがはっきりと分かれる部分だ。工場出荷時の設定でHD映像を視聴した場合、端的にいうと、発色に不自然さを感じないビクター、沈んだ黒とこってりとした発色の松下、白が印象的でコントラスト高い東芝、誇張の少ないソニーといった印象になる。

photo ソニーの“ハッピーベガ”。誇張の少ない素直な画質がソニーらしい

 では工場出荷設定ではなく、画質を調整してみるとどうなるか? 画質調整用のDVDを用い、1つの基準に沿って画質を追い込んでいくと、どの製品も似通った雰囲気になるものの、初期設定の傾向がまだ色濃く残る。たとえば、黒の締りがいいのは松下「TH-26LX500」だし、白の発色が鮮やかなのは東芝「26LH100」だ。店頭では工場出荷状態で展示されているケースが多いが、この状態の印象は、製品そのものの持つ画質の傾向と考えて良いだろう。

 パネルの持つ反応速度などが影響する“残像感”では、レビューで触れたように松下「TH-26LX500」が1歩抜きん出ている。では他製品に問題を感じるかといえば、スポーツ中継などを見てもそうそう気にはならない。

photo 松下は残像感を少なくするため、1つのコマを表示した直後にバックライトを消し、残像を見えなくする「バックライトスキャン」という機能を搭載した。写真は製品発表会で行われたデモンストレーション。画面内の黒い帯がバックライトを消した部分だ

 今回はあえて工場出荷設定の画質設定のまま(つまり明るい部屋の視聴向け)、照明を完全に落として残像が“気になりやすい”環境で視聴してみたが、とくに問題を感じる製品はなかった。ノイズリダクションの設定なども影響されるだろうが、残像感は液晶テレビの課題だっただけに、どの製品も着実に改良を重ねてきた結果だと理解していいだろう。

 「斜めに強い」をうたう「新PEAKS」を搭載した松下「TH-26LX500」に関しては、この点にも着目したが、残念ながら他製品と比較して目だって斜めの表現が綺麗という印象は受けなかった。同じ映像を凝視すると「滑らかかな?」という感じはあるものの、26インチで1366×768ピクセルという高解像度では画素サイズが小さいため、そもそも斜め線のジャギーが目立たない。たとえば、32/37型といったサイズの大きな製品で解像度が同じだったら、あるいは液晶テレビよりも画素サイズの大きなプラズマテレビなら、その機能の意味も大きいのだろうが、今回比較した26インチに関しては、とくに優れているという評価は下せなかった。

接続する機材に合わせて検討したい入出力端子

 入出力端子に関しては、もっとも豊富なのは松下「TH-26LX500」。この点は価格相応というか、今回取り上げた製品の中では唯一ハイグレードモデルという位置付けなので当然だ。AV入力が6系統あり、そのうちS端子/D端子が5系統、さらにi.LinkとHDMIも装備している。i.LinkとHDMIが省略された下位モデルの「LX50」シリーズでもAV入力は6系統と豊富で、今回取り上げた製品で唯一前面に入力端子を備えている。

photo 松下「TH-26LX500」がもっとも入出力端子は豊富

 ソニー「KDL-S26A10」も“ファミリー向け”といいつつAV入力は5系統あり、いずれもD端子かS端子を備えている。こうした点は、いかにもAV志向の強いソニー製品だ。またドット ツー ドット表示が可能なアナログRGB入力も機能的に優秀で、PC接続を考慮している人にはこの点だけでも魅力的だろう。

 価格に対して入力端子の豊富という点では、ビクター「LT-26LC60」も悪くない。AV入力自体は3系統だが、S端子+D端子+コンポーネント端子、またはS端子×2+コンポーネント端子という組み合せの接続も可能だ。さらにi.Link×2、HDMI、アナログRGBと、種類だけでいえば今回取り上げた製品の中ではもっとも豊富になる。アナログRGBに関しては“おまけ”と思ったほうが良いかもしれないが、HDMI端子を装備する製品を安価に入手したいなら、まず候補に挙げて良いだろう。

photo ビクター「LT-26LC60」の側面端子群。HDMI端子を装備する製品を安価に入手したいなら、まず候補に挙げて良い

 逆に、入出力端子の数に不満を感じたのは東芝「26LH100」。ハイビジョンレコーダーを内蔵している点を考慮しても、D端子とS端子が1系統ずつというのはいかにも寂しい。実は、東芝の液晶テレビは上位モデルの「LZ150」シリーズを含め、D端子は1つしかない。デジタルレコーダーを複数台所有しているような人は、既にD端子が足りないということになる。

 デジタルチューナー内蔵のHDD+DVDレコーダーが次々と登場し、必然性が薄れつつあるi.Link端子はともかく、HDMI端子はどうだろうか? レコーダーやプレーヤー側の対応が始まったばかりだから必須とまではいえないが、今後必要性が高まることは間違いない。たとえばPCのソフトウェアDVDプレーヤーでも、ビデオカードでビデオ出力(コンポーネント出力含む)している画面側はDVDビデオの再生ができないといった対策が施された製品もあり、セキュアにデータ転送が可能なHDMIによる接続が現実に必要になりつつある。

 HDMI端子は、液晶テレビを長く使いたい人にとって“保険”という意味合いも強いのだが、PCでデジタル放送をストリーム録画し、液晶テレビでハイビジョン再生したいという人には必須になる可能性が高い。PCモニターの代替としてではなく、PCを利用して映像再生を考慮している人はHDMI端子の有無は決して無視できないはずだ。

製品名 AV入力(内S端子/D端子) AV出力(内S端子) 音声出力(デジタル) i.Link HDMI アナログRGB
ビクター
「LT-26LC60」
3(2/2)※2 1(1) 1(1) 2
東芝
「26LH100」
3(1/1) 1(0) 1(0) × × ×
東芝
「26LC100」※1
3(1/1) 1(0) 1(0) × × ×
松下
「TH26LX500」
6(3/2) 1(1) 1(1) 2 ×
松下
「TH26LX50」※1
6(3/2) 1(1) 1(1) × × ×
ソニー
「KDL-S26A10」
5(3/2) 1(1) 1(1) × ×
※1:参考比較用
※2:D端子+コンポーネント端子

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