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デジタル放送にまつわる、いくつかの裏事情小寺信良(2/3 ページ)

» 2005年07月04日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 また南西へ目を向けると、横浜から先もエリア外となっている。最近はJR湘南新宿ラインの運行開始により、もはや鎌倉あたりまでは通勤圏で通用するようになってきてるわけだが、ここでも距離の割にはデジタル放送が入らない世帯が多く存在する。地上デジタル放送推進協会のスケジュール表によれば、神奈川県は既に全局開始という事になっているが、これは単に該当地区のアナアナ変換が終了して準備ができたというだけで、実際に放送が映るわけではない。

 反対に東京タワーなど関係なしにデジタル放送エリアが充実しているのが、茨城県である。なぜかと言われれば、茨城県は日本で唯一民放がなく、地域情報を発信することができない。そのため一刻も早く、NHK主導で県域放送を実現する必要があった、という答が一応表向きには引っ張り出されてくる。

 だが放送関係者の間では、単に「放送開始当時NHKの会長であった海老沢勝二氏の出身地だから」で説明が付いている。出身地が日本で唯一民放がない県、という事実をNHKの会長としてどう考えていたかを考えると、痛くない腹なのかホントは痛い腹なのか筆者は知らないが、探られても仕方がないことかと思う。

 ここでもう一度先ほどの、デジタル放送開始スケジュールを見て欲しい。この表によると、次の放送開始エリアが大きく広がるタイミングは、2005年12月であることがわかる。

 買う側の立場になって考えてみれば、いくらデジタル放送に興味があったとしても、見られないもののためにテレビを新調する人などいない。従ってデジタル放送対応テレビの次の波は、この夏ではなく、今年の年末商戦であることが予想される。

 特に東北地方では、単なるエリア拡大ではなく、新規エリアとしてデジタル放送が開始される絶好のタイミングとなる。新鮮さも手伝って、購買意欲も高まることだろう。ここまで考え合わせれば、各メーカーとも強力な製品は、年末のタイミングに合わせて用意してくることは自ずと分かってくる。筆者としてもこの夏商戦の邪魔をしたいわけではないが、今年の末までもうあと半年のことである。どうせここまで待ったのなら、テレビに関しては年末のラインナップを見てから考えたほうが得策だろう。

放送局と個人情報の関係

 デジタル放送を受信するためには、B-CASカードが必要になる。既に先行してBSデジタル放送が開始されているので、ご存じの方も多いかもしれない。要するにこのカードをテレビなりレコーダーなり、デジタルチューナーが付いている機器に挿しておかなければ放送が見られないのだが、この仕組みにも問題が多いと筆者は考えている。

 WOWOWやスターチャンネルのような有料放送を受信する権利の認証のために、このカードが必要というだけならまだ話はわかる。だが無料放送を録画ではなく単に表示するだけなのに、このカードがなければまったく映りもしないというのはどうだろうか。例えば将来的に海外のメーカーが日本市場向けに製品投入を考えた場合、このカードの存在が障害となって、フェアな競争が行なわれなくなる可能性がある。

 またこのカードは、ユーザーがカードのシュリンクラップを破いた時点で「B-CASカード利用許諾契約約款」に同意したことになる。こういった契約締結のあり方は、PCのソフトウェアでよくある方法なのだが、使ってみなければその価値が確認できない以上、法的に無効なのではないかという指摘が早くから行なわれている。

photo この時点でB-CASカード利用許諾契約約款に同意したことになる

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