先週のコラムでHDMIについて書いたが、今回はデジタル放送にまつわる別の問題を取り上げてみたい。
月も変わって7月となり、そろそろ家電業界では夏のボーナス商戦へ向けての動きが活発化し始めている。日本はバブル経済崩壊後から長らく景気の低迷状態が続いてきたが、ここ1〜2年というもの、電器メーカーの決算報告などを見ると、デジタル家電を中心に少しずつ明るい兆しが見えてきているようである。
そういう意味では、地上デジタル放送への転換というのは無理矢理ながらも、経済面でのカンフル剤的効果はあったと考えるべきだろう。もちろんこのまま順調に推移してくれることを願っているのだが、ことデジタル放送関連商品に関してはいろいろと考えておくべき事がある。
地上デジタル放送が、現在は都心部を中心とした一部地域であることは、多くの方もご存じのことだろう。社団法人 地上デジタル放送推進協会のサイトでは、2004年11月末の時点での各都道府県別デジタル放送開始のロードマップを見ることができる。
「開始済」と書いてある都府県が既に地上デジタル放送が開始されているわけだが、この表を見る限り、かなり広範囲で放送が始まっているように感じられることだろう。だが実際のエリアには、この表だけみていてはわからないギャップが存在する。
この表と現実のギャップがもっとも顕著なのが、関東エリアである。同サイトでは、Mapionの地図を利用した放送エリアマップを参照できるので、ちょっと見てみよう。このリンクは、豊島区池袋を中心として1/90万の縮尺で、NHK教育ならびに民放の放送エリアを見たものである。
色の濃いオレンジ部分が現在放送が受信できる範囲、薄い黄色部分が今年末から放送が開始される範囲だ。色の濃い部分の形に注目していただくと、かなりいびつな形であることにお気づきだろう。電波の中心点である東京タワーから見れば、南東方向一面はもう東京湾なので、居住地は少ない。一方でその反対側の内陸部に向かう北側は、約90度の角度で大きくえぐれている。
関東エリアのベッドタウンは、鉄道の通勤線に沿って形成されているわけだが、このエリアには西武有楽町線、西武池袋線、東武東上線、JR埼京線、JR京浜東北線などの大動脈がある。世帯数で言えば、かなりの数に上るだろう。都心部で開局とはいっても、内陸へ向かうこれだけの範囲で、まだ地上デジタル放送が受信できないのである。
なぜこの方向一体が放送の谷間になっているのかと言えば、このエリアは放送波が複雑怪奇に混在している地域だからだ。キー局では埼玉県の児玉中継局、栃木県の宇都宮中継局があり、その周辺でアナアナ変換を行なわなければならないということも大きな理由であるが、そのほかにもテレビ神奈川や千葉テレビ、テレビ埼玉、群馬テレビなど、あちこちのUHF局をダイレクトに受信していたりする。
この状態でさらにデジタル放送波を出してしまうと、今まで見えていたアナログ放送が受信できなくなるおそれがある。いわゆるブースター障害が起きる可能性が高いというわけだ。日本中でもっとも電波のやっかいな地域が、ここなのである。
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