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「CATV」対「電話」、IPテレビ規制めぐり米議会で対立

» 2005年07月21日 18時56分 公開
[IDG Japan]
IDG

 インターネットプロトコルを介したTV放送、IPTV(TV over IP)がついに、米国一般家庭のTVセットで流れるようになるかもしれない。ただし、その前に連邦議会で規制をめぐる議論が行われる。

 これは、「CATV事業者」対「大手電話会社」という、2つの巨大な業界が対抗する戦いだ。双方は、米国の住民向けに提供される従来型TVや最新ビデオのブロードバンドサービスの競争に適用する規則をめぐり、議論を繰り広げている。

 これまでCATV事業者は、規則に従い、サービス提供地域のすべての地域地方自治体とそれぞれ営業許可契約の交渉をしなければならなかった。通信大手のSBC CommunicationsとVerizon Communicationsは既にIPTVサービスの提供を始めているが、両社は議会に対し、この規則を簡素化するよう要請している。大手電話会社は、かつて自分たちが唯一の電気通信事業者だった時代には、従来の電話市場において厳しい規制に直面していたが、議会が1996年米国電気通信法を成立し、音声通話を自由化して以来、競合の新規事業者に対する規制は緩くなったと主張している。

 今回議会に提出されている2つの法案は、CATVの競合各社に対して地域自治体による営業許可の取得義務を免除するというもの。ただし、地方自治体は引き続き、営業許可料は徴収する。基本的には、SBCやVerizonなどの会社は、連邦政府による営業許可のみを交渉すればいいことになり、料金は地方自治体に振り分けられることになる。これらの法案はさらに、これまでCATV事業者が義務付けられてきたのと同様、新規のビデオサービス事業者に対し、教育およびパブリックアクセスのTVチャンネルの提供を義務付けている。

 7月20日、ワシントンD.C.でIPTV政策をめぐる討論会を主催したNortel Networksのブロードバンドネットワークソリューション担当ジェネラルマネジャー、ウォルター・メルグラ氏によれば、IPTVでは、ユーザーのTVセットに複数のサービスが提供される可能性がある。ユーザーは自分のTVセットで、音声、ビデオ、ブロードバンドインターネット接続など、各種サービスを受信できるようになり、また、TV番組がWebデータと連携され、料理番組を見ている最中にレシピをすぐにダウンロードするといったことも可能になるだろう、と同氏は語っている。

 SBCの規制政策担当副社長補佐ブレント・オルソン氏は、CATV市場における競争の活発化に伴い、議会は電気通信業界の新規参入企業に与えたのと同様の規制優遇措置を、この市場の新規参入企業に対しても与えるべきだと指摘している。ビデオサービスに関しては、CATV事業者と競争できるよう、電話会社が何千件もの営業許可契約を交渉しなくて済むようにすべきだ、と同氏は政策討論会で語っている。

 ベル系地域電話会社4社はこれまで、かつての電気通信サービスの独占事業者としてさまざまな通信規制に直面し、規制の優遇措置を受ける新規のライバル各社と戦ってきた。だが今回は、ベル系地域電話会社がビデオ事業に参入する番だ。ベル系地域電話会社は、CATV事業者による今の独占状態は、かつての自分たちに対するのと同様の方法で扱われるべきだと主張している。「新規参入企業には、現行の規制を適用すべきではない」とオルソン氏は語り、全国レベルでの営業許可契約に賛成している。

 一方、CATV事業者は、電話会社も自分たちが従ってきたのと同じ規制に従うべきだと主張し、ベル系地域電話会社に地方自治体の営業許可の取得義務を免除するという動きに反対している。既に1996年米国電気通信法で、ベル系地域電話会社によるビデオ市場への参入は認められているが、それには何年もかかった、と業界団体の全米有線テレビ事業者連盟(NCTA)の政府渉外担当上級副社長スティーブ・ベリー氏は語っている。

 同氏は、ベル系地域電話会社は世界でも最大規模の企業であり、特別な優遇措置は必要ないと指摘。営業許可をめぐる法律が簡素化されれば、ベル系地域電話会社に「世界で最大規模の電気通信業者ならではの、競争上の独自のメリット」を与えることになるだろう、と語っている。

 「同様のサービスは等しく扱う必要がある。今の段階で、電話会社に優遇措置を与える必要などまったくない」とベリー氏。

 リック・バウチャー下院議員(バージニア州選出・民主党)は、この討論会において、妥協案を提示した。全国レベルでの営業許可システムを支持する同議員が提案したのは、CATV事業者も、多数の地方自治体で営業許可を個別に申請する代わりに全国レベルのシステムを利用できるようにするというもの。それと同時に同議員は、これまでCATV事業者がそうさせられてきたように、電話会社に対しても、1つの地域のすべての顧客にサービスを提供するよう義務付けるという、CATV業界による要求を退けた。

 1つの地域に複数のビデオサービス業者が存在すれば、新規の競合企業は、最善のチャンスを見込める地域でサービスを提供し、利用を見込めない地域にはサービスを提供しないで済むことになる、とバウチャー議員。「全域をカバーするとなると、多くの投資が立ち往生に終わるだろう」と同議員は語っている。

 さらにバウチャー議員は、ベル系地域電話会社と競争できるよう、地方自治体がブロードバンドサービスを提供することを認める関連法案も提案した。「この法律についてはおそらく、全国レベルでの営業許可をめぐる法律と同時に検討すべきだろう。CATV事業者も電話会社も、ある程度の妥協は必要だ」と同議員。

 VerizonとSBCは地方自治体によるブロードバンドサービスの提供を禁止する法律を求めてロビー活動を展開しているが、SBCのオルソン氏はバウチャー議員の妥協案に対して反対は唱えなかった。

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