iPodやネットワークウォークマンなど、ポータブルオーディオプレーヤーの人気は相変わらず高く、C-NEWSの調査によれば「今持っているのはMDプレーヤーだが、次に買うならばHDD(フラッシュ)プレーヤー」という人が多いそうだ。また、アップルが6月末にiPodの価格改定を発表したこともあり、夏のボーナスで「ついに買った!」という人も少なくないはず。
本特集では、「初めてポータブルプレーヤーを買った」という人を対象に、数回にわたってポータブルプレーヤーの“基礎の基礎”を解説していきたい。
ポータブルCD/MDプレーヤーならば、買ってきたCDをそのままセットするか、ミニコンポなどでCD-MDのダビングを行えばすぐさま使える。そこにユーザーが介在できる余地は、せいぜいMDLP(4倍モード)を使うか使わないか程度しかない。
しかし、デジタルオーディオプレーヤーの場合は、CDを一度なんらかのファイルに変換した後にプレーヤーへ転送するという作業が発生する。
iTunesやSonic Stageなど最近の転送(音楽管理)ソフトは非常に良くできており、CDをセットして「取り込み」-「転送」とボタンを押していけば、とりあえずポータブルプレーヤーで音楽を楽しむことができる。しかし、MP3/WMA/AACなどといった圧縮音源ファイルの特性や仕組みを知っておいた方が、よりポータブルプレーヤーを使いこなすことができる。
普段CDを聞くときにあまり意識をすることはないが、販売されている音楽CDはCD-DA(Compact Disc Digital Audio)と呼ばれる規格に基づいており、12センチあるいは8センチのコンパクトディスクに、サンプリング周波数44.1KHz、量子化16ビットのPCM方式でデジタル録音されている。
“サンプリング周波数44.1KHz、量子化16ビットのPCM方式でデジタル録音”といわれても分かりにくいが、この形式では12センチのCD(データ容量でいえば700Mバイト)に約80分の録音が行えるので、「音楽CDはCD1枚=約80分=700Mバイト」という程度に覚えておけばよい。
CD-DAは音楽CDのフォーマットに採用され、音楽流通のスタンダードとして使用されているが、利用されているPCMというデータ形式は「CD1枚=約80分=700Mバイト」という説明からも分かるよう大量のデータ(ストレージ)容量を必要とする。
1分あたりのデータ量が多いのは音質を保つため仕方ないが、データ量が多いままでは、楽曲をネットワークで流通させたり、データ量あたりの単価がCDに比べて高価なフラッシュメモリや小型HDDを搭載したプレーヤーなどで活用することは難しい。そこで登場したのが圧縮音源技術だ。
圧縮音源技術とは「元の音データから人間の耳が感じにくい部分を間引くことで、データ量を減らす」という考えに沿って開発されたもの。代表的な圧縮音源のひとつ、MP3について開発元の独Fraunhofer IISは「音楽CD並の音質を保ったままデータ量を約1/11に圧縮することができる」としている(128kbps時)。
この圧縮音源技術の登場によって、CDに収録されている音楽データをなんらかの圧縮音源形式に変換し、そのファイルをポータブルプレーヤーへ転送して楽しむという現在の流れが作られた。
最近では40Gバイトや60Gバイトなどの大容量HDDを備えた製品も登場しており、少しでも高い音質で音楽を持ち運ぶために圧縮音源を使用しないユーザーもいるが、それはあくまでも例外的なケース。ポータブルプレーヤーのヒットは、音楽データを大幅にサイズダウンできる圧縮音源技術の登場なしにはあり得なかった。
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