さらに何点かハイエンド機らしいところが見受けられる。
まずはホワイトバランス。カスタム設定が2個に増え、逆に「蛍光灯設定」がなくなった。実際、松下電器の蛍光灯「パルック」だけでも、白色/昼白色/昼光色と3種類もあるし、蛍光灯はメーカーによって微妙に異なるので、蛍光灯時はオートかカスタム設定を使ってくださいということなのだろう。ハイエンド機らしい割り切りだ。ホワイトバランス微調整やホワイトバランスブラケット撮影もなくなっている。
また画質設定が「ビビッド」や「ナチュラル」といった表現ではなく、コントラスト、彩度、シャープネス、ノイズリダクションの4つそれぞれを任意にセットできるのもハイエンド機らしい。各パラメータの組み合わせをいくつか保存しておけるとなおよかったか。
バッテリーは新型の大容量リチウムイオン充電池。CIPA規格で約280枚の撮影ができる。ちなみに保証外だが、コネクタ部や電圧は同じなため、一回り小さいFZ5のリチウムイオン充電池をそのまま使うこともできるようだ。
肝心の画質は従来のヴィーナスエンジンIIを搭載しており、なかなかのもの。微妙なシチュエーションでのAWBでいくらかブレは感じられたが(特に白色蛍光灯の下ではオートではうまく合ってくれなかった)、露出のヒット率は結構高いし、シャープで鮮やかな絵を見せてくれる。この辺は最近のLUMIXシリーズを継承したといっていい。もちろん手ブレ補正は強力で望遠には欠かせない。
レンズもなかなか優秀で逆光時のパープルフリンジもほとんど気にならない。マクロ時は約5センチまで寄れるが(ワイド端)、テレ端では2メートル。テレ端でもうちょっと寄れるともっと嬉しかった。
ISO感度は80〜400。ISO80でも暗部のざらつきはあるが、この辺は画質設定の「ノイズリダクション」で多少減らすことが可能だ。
ただISO400に増感するとノイズがけっこう気になる。画質面での一番の不満点がここだ。
ちなみにレンズは35〜432ミリの12倍ズームだが、5Mモード以下のときの挙動が代わり、新たに「EX光学ズーム」が採用された。
普通、800万画素デジカメを3Mモードで使うと、カメラ内部では普通に撮影して保存時に3Mサイズに縮小する。でもFZ30は違う。
画像サイズに「3M EZ」と書いてあるのだが、このEZがポイント。3MモードにするとCCDの中央3M分だけを使うモードに切り替わるのだ。これによって画角が変化し、テレ端が669ミリにまで伸びる。そうするとワイド端も狭くなってしまうが、その分はフルサイズで撮って3Mへ縮小という処理で対処するので、実質的に3M時は19.1倍ズームレンズとなるわけだ。5M時は同様の処理で15.5倍となる。画像サイズを小さくしたらその分望遠に回しましょうという設計である。
個人的には8Mで撮って内部で3Mや5Mに縮小した方が、最初からCCDの中央部を3Mや5M分だけ使うより画質を上げられる気もするのだが、まあ面白い考えだ。
ちなみに、別途2倍と4倍のデジタルズームも用意されている。
そんなわけで、コンパクトな低価格デジタル一眼レフと変わらないんじゃないかという質感を持って登場したFZ30。確かにでかくて重い。でもそれだけの内容に仕上がっている。
何しろキビキビ動くし、AFも高速だし、グリップはしっかりしてるし、構えたときの安定性やシャッターの感触もいいし、EVFも格段に見やすい。35〜420ミリだがワイコンやテレコンをダイレクトにつけられるのでさらに撮影範囲も広げられる。使っていて楽しい上に実用性が高いカメラなのだ。
デジタル一眼レフと比べるとCCDが小さい分どうしてもダイナミックレンジや感度面で不利だが、逆に可変式の液晶モニターを見ながら撮れる、動画も撮れる、コストパフォーマンスも高い、一眼レフ+望遠レンズに比べれば軽くてコンパクトというメリットがある。
でも一番大事なのは、スイッチオン、ズーミング、半押しでAF、タイミングを合わせてカシャッという一連の操作にリズムがあって使ってて気持ちいいということ。そこを高く評価したい。
液晶モニターの開き具合が中途半端なので意外に自由度が足りないとか、露出補正にダイヤルを使えないのは理解しがたいなど“画竜点睛を欠く”ところはあるけれども、今までの高倍率ズーム機に不満がある人も使ってみる価値は十二分にある。
しっかり構えてしっかり撮れる本格派マニュアル系超望遠デジカメを求めている人は是非これを手にしてみて欲しい。
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