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プラズマテレビの逆襲麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2005年08月31日 16時41分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――65V型でフルHDを実現したプラズマは、圧倒的な強さを手に入れたわけですね。

麻倉氏: そうはいっても、フルHDの65V型という大画面の世界には、いろいろな課題があります。映像にごまかしがきかないサイズゆえに、最高の映像技術が求められるのです。その点で松下は、当初から画質のリーディングメーカーでした。2000年のBSハイビジョンスタートの時に、プラズマで最初にコントラストの重要性をアピールしたのも松下です。当時打ち出した3000:1というコントラスト比は、以後5年間プラズマ市場でリードし続けました。

 もっとも単純にコントラスト比の数値だけを高めるのなら、全白と全黒の差を広げればいいのですから意外と簡単です。実際に、韓国・台湾メーカーのパネルでは、8000:1とか10000:1という高コントラスト比をうたうものもあります。ですが、コントラスト比の数値を高めれば高めるほど、そこに割り当てる階調が足りなくなってきます。

 松下も当初は階調の足りなさに苦しんだ時期もありましたが、2003年に登場したVIERAというブランドから階調を増やすという方向に出たのです。「フルHD/フルコントラスト/フルグラデーション」――この3つの“フル”が作品性を持つコンテンツを楽しむキーワードになります。

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――松下以外にも、パイオニアや日立といった国内のプラズマ陣営が元気ですよね。

麻倉氏: プラズマシーンでうれしいのは、パイオニアの復活ですね。パイオニアは、パッケージメディアをキチンと表現しようという一貫したポリシーを持っており、他社がプラズマを業務用としか考えていなかった時代から、家庭用のプラズマを投入するなど積極的でした。その映像に対するパイオニアスピリットが近年は薄れ、単に輝度パワーだけを求めるなど大衆に迎合していた気がします。

 それが先日発表された新しいピュアビジョンでは、ハイパワーをそのままに、繊細さや色の深みなどを加えて映像としての格を上げてきました。黒の沈みがしっかりとして、なおかつ滑らかなグラデーションに仕上げ、ノイズも少なくなった。従来のパネルに比べて新パネルはかなり効率が上がっているのですが、その増えたリソースを、従来のように明るさにふらず、しっかりと画作りにふっている点が評価できます。日立が打ち出した“輝きのある映像”も注目したいですね。

 映画のような表現型のコンテンツをするためには、私は自己発光のディスプレイが必要だと思います。自己発光ならば、発光しなければそこが完全な黒レベルになる。自己発光型ディスプレイとしては有機ELやSEDもありますが、現実解として今映画を楽しむのなら自己発光型で大画面で、そしてフルHDまでも手に入れたプラズマがもっとも有力な選択肢といえるでしょう。

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