ITmedia NEWS >

BS第9チャンネルをどう利用するのか?西正(1/2 ページ)

» 2005年09月29日 20時16分 公開
[西正,ITmedia]

BS第9チャンネルを巡る動向

 現在、BS第9チャンネルはNHKのアナログハイビジョン放送に割り当てられている。NHKはBS放送用衛星「BSAT-1a」のトランスポンダー1本分の伝送容量(48スロット)を利用して同放送を提供しているが、BSAT-1aは2007年中に衛星寿命を迎える。それに伴いNHKのアナログハイビジョン放送は終了することが決まっている。そこで総務省は2007年までにBSAT-1a後継機を打ち上げ、新たにBS第9チャンネルの周波数を使ってデジタル放送を行う複数の新規放送事業者に再割り当てすることを決めている。

 報道ベースでは、新規事業者2社程度に開放されるBSデジタル放送に、三井物産、家電量販大手のビックカメラ、映画専門のスター・チャンネルを中心に4社が申請を行ったと伝えられている。

 放送を始めてすでに5年近くになる民放キー局系のBSデジタル放送局各社が視聴率を伸ばせずに厳しい経営を続けているため、新規参入は見込めないのではないかと見られた時期もあった。

 しかし、視聴可能世帯数が1000万世帯を突破する見通しになったことから、4社が名乗りを挙げることになったと評されているが、本当にそうだろうか。大いに疑問であると言わざるを得ない。というのも、新規参入する以上は、達成が可能な事業計画を立てる必要があるはずだが、今のところ全く見当がつかないからだ。

 最も分かり易いのはスター・チャンネルだ。現在のBSデジタル放送各社の中で唯一、スター・チャンネルだけが帯域の関係でSD画質での放送を行っている。新規の事業者ではないにせよ、これを機に新たな帯域を確保してHD放送を行おうという意図は分かりやすい。ただ、スター・チャンネルの場合にはCSでも放送を行っている。いくら日本人が画質に対するこだわりが強いといっても、チャンネルを持ち過ぎることが負担にならないかが心配されるところだ。

 では、スター・チャンネル以外の事業者の狙いはどこにあるのか。自信をもって事業を始めるだけのビジネスモデルは構築されているのだろうか?

ビジネスモデルの検討

 ビジネスモデルと言っても、放送事業である以上、基本的には広告放送か有料放送のどちらかということになる。

 民放キー局系各社は広告放送の道を選択した。しかしながら、今さら受信機の普及を心配する必要のなかった地上波放送とは異なり、まずは視聴してもらうための受信機の普及の促進から手がけなければならなかったことから、広告媒体として成り立っていくことの難しさを改めて思い知らされることになった。

 当初の1000日1000万台の目標は大きくズレ込み、結果的には5年目になってようやく視聴可能世帯が1000万世帯になったところである。1000万世帯まで行けば、相応の広告収入を得ることは可能であろうか。

 筆者はこの点をやや悲観的に見ている。テレビ広告費のマーケットは好不況の影響を受けやすいとは言いながら、順調に2兆円台をキープしている。ネット広告の伸びが大きいとは言っても、実額ベースでは、テレビ広告費が相変らずトップの座を譲る気配はない。しかし、さすがのテレビ広告費も2兆円前後からさらに拡大していくことは期待しにくい状況にあるからだ。

 地上波とBSとの間でテレビ広告費の取り合いになるだけのことでしかないとすると、明らかにBSは不利なままである。だからこそ規制緩和が求められているのであり、希望する民放キー局はBSデジタル局を吸収し、一局二波になることを認めていくべきではないかという議論になっているのである。一局二波になれば、地上波局との間での番組の使い回しも可能になるし、何よりも地上波とはターゲットを変えた編成を組むこともやりやすくなる。

 以上のように、もともと広告放送の雄である地上波民放系ですら、広告モデルでの経営に苦労しているわけである。新規に参入してくる事業者が、軽々に広告モデルでなどと言ったところで全く説得力がない。

 そうなると有料モデルで行くのだろうか? 有料モデルとなると、先行しているWOWOWの状況が気になるところだが、アナログからの移行問題を抱えているとは言え、加入者数250万件前後をキープするのに非常に苦労しているところだ。

 別にWOWOWの経営が悪いということではない。BS放送のWOWOWにとってライバルはNHKのBSぐらいだろうと言われるほど充実したエンターテインメントチャンネルである。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.