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今こそ「お金」の管理を見直そう――マネー管理ソフトで何ができるのか?第1回

» 2005年10月07日 00時00分 公開
[ITmedia]
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なぜ日本でマネー管理ソフトが一般的ではないのか?

 税金や社会保険料は上がる一方。それに比して、収入はなかなか上がらない。総理府の統計によれば、働き盛りの40代、50代の男性の半数近くが今の生活に「不満」を抱いているのだという。生活費や子供の教育費を考えれば、しわ寄せが自分の懐具合に来るのはやむをえない。現状に不満を抱くのは当然ともいえる。

 給与収入がなかなか増えないのであれば、それを上手に活用するのが当然の一手。そのせいかオンライン証券を中心にした個人投資家はここ5年ほどで急増したし、どの新聞・雑誌を見ても、投資相談やマネーの有効活用術といった相談コーナーが人気を呼んでいる。

 ところが1つ不思議なことがある。日本では、欧米に比べて自分のマネーを有効管理するためのソフト――マネー管理ソフトの利用がそれほど一般的ではないのだ。実際、企業向けの財務管理ソフトが山ほどあるのに対し、個人向けのマネー管理ソフトといえば、『Microsoft Money』が知られているぐらいだ。

個人向けの統合マネー管理ソフト「Microsoft Money 2006」

 確かに家計簿ソフトならある。だが、家計簿ソフトは毎月の収入と支出を記録するのが主な役割で、その中から支出のちょっとしたムダを探したり、どれぐらい貯蓄に回しているのかぐらいは分かる。しかし、家計簿ソフトはしょせん家計簿ソフトに過ぎない。自分の資産全体を見渡し、どうすれば持てる資産を有効活用できるか、ダイナミックに戦略を練ることはできないのである。

 なぜ日本ではマネー管理ソフトがそれほど一般的ではないのか? 1つには日本の個人資産管理が家計簿管理レベルを今ひとつ抜け出せていないことがある。だが、それ以上に大きいのは、マネー管理ソフトが、まだ広く知られていないためではないだろうか。そして「使い始めるきっかけ」がこれまでなかなかなかったのである。

 「まずMoneyが家計簿ソフトとは異質なソフトであることを理解してもらうことからスタートしなければなりませんでした」。マイクロソフトでホーム&リテール製品部シニアプロダクトマネージャを務める柏木淳氏はそう苦笑する。

 実際その違いは多岐に渡るのだが、柏木氏は分かりやすい違いとして「電子明細がダウンロードできるソフト」であることをまずアピール。また、さまざまな口座を取りまとめられる(アカウントアグリゲーション)ことなどを前面に打ち出して、「使い始めるきっかけ」にしようとしたと話す。

マイクロソフトでホーム&リテール製品部シニアプロダクトマネージャを務める柏木淳氏

“日本型”マネー管理ソフトの登場

 日本ではまだ十分ななじみのないマネー管理ソフトだが、欧米、特に米国では、状況がまったく違う。先に挙げたMicrosoft Moneyのほか、Intuit社の『Quicken』が2大ソフトだが、これらマネー管理ソフトは「個人向けPCでは必須ともいえる存在になっている」(柏木氏)。歴史も古く、Intuitが最初にQuickenをリリースしたのは20年以上も前で、対抗馬としてMicrosoft Moneyが登場したのも今から12年前の1993年だ。

 そこには日米の状況の違いがある。米国は知られているように早くから小切手やカードが中心のキャッシュレス社会になっていた。そのため、いくら支払いしたか、常にPCやPDAで管理していないと、お金の流れが分からなくなってしまうのである。また、「確定申告を自分で行う習慣も根付いているので、そのためにもこうしたソフトが必要だった」(同)

 一方、その当時の日本は現金での取引が中心だったので、それこそ手書きの家計簿でさえ用が足りたのである。銀行残高は通帳を小まめにつければ十分。個人投資家もさほど多くなかった。マネー管理ソフトを受け入れる土壌そのものが、日本にはまだなかったのである。

 「マイクロソフトでは、英語版で出したソフトを比較的早く日本語版として出しています。しかしMoneyで日本語版が出たのは98年のこと。英語版リリースから5年経っています。これは異例のことといってもいいでしょう」。柏木氏はそう話すが、そこにはこうした事情が隠されていた。

 ではなぜ98年になって登場したのだろうか。その理由として、日本でもクレジットカードなどのキャッシュレス化が進み、インターネットの普及とともにオンラインバンキングやオンライントレードの第1次ブームが起きたことが挙げられる。Microsoft Moneyのようなマネー管理ソフトを受け入れる下地が、日本にもでき上がったのである。

 もちろんMoney側もその期間を生かし、日本の社会事情を考えたソフトとして登場した。ただ、正直な話、この最初のバージョンはユーザーインタフェースなどの面で十分なものではなかった。筆者も当時「面白いソフトだけれど、これじゃ使いにくい」と感じたものである。

 だが、同社は毎年このソフトのバージョンアップを実施、ブラッシュアップを行ってきた。例えば、99年にはインターネットバンキングの電子明細ダウンロードなどに対応。当初はわずか8社だった対応金融機関は2005年9月の時点では145社にまで増えている。

 これには同社の手で米国で標準的な金融取引情報の交換規格「OFX(Open Financial eXchange)」の日本語化を行い、同社サイトからダウンロードできるようにするなど地道な努力が寄与している。

対応する金融機関も145社に達した(2005年9月時点)

マネー管理ソフトでなにができるのか

 さて、ここまで触れてきたマネー管理ソフトだが、それではいったいどんなソフトなのだろうか?

 この質問に答えるのは案外難しい(一番いいのは試しに使ってみることだ)。今回の連載は、それぞれの機能について分かりやすい事例を挙げ、その有効活用法を紹介していくつもりだが、一言で言えば、Microsoft Moneyとは、「自分の資産を、1つのソフトで統合的に見つめ直せるソフト」である。

 色々な銀行に口座があり、入金があったり、引き落としがあったり、あるいは引き出したりしている。それぞれの通帳を見れば個別の口座の動きは分かるが、複数の口座がある場合、全体として把握するのは面倒だ。それは証券口座も外貨預金口座も変わらない。

 だがMoneyがあれば、それを1つの画面の中で見ることができる。電子明細のダウンロードはごく簡単で、手間もかからない。色々な銀行で引き落としがある場合、残高が気になることがあるものだが、これがいつでも見られるようになった。銀行の支店に行くのは入出金する時だけである(面白いもので、筆者の場合、地元のとある地銀1行だけダウンロードサービス非対応だったのだが、面倒なので結局解約してしまった)。

 収支管理では、家計簿ソフト的な使い方もできれば、もうちょっと高度な使い方もできる。つまり各口座を扱い、1カ月のキャッシュの流れをグラフや図表に表示して把握することができるのである。当然、自宅のキャッシュフローがプラスなのかマイナスなのかも一目だ。自分の家計を企業に見立てて、マネジメントゲームをするのも面白いものだ(自分の支出案件に一番ムダが多いことに気づかされて、ちょっと痛かったりもするのだが)。

 資産管理機能では、株式や外貨預金はもちろん投資信託や債券、ストックオプションなど多様な商品に対応している。複数の取引先・口座になっている場合でも、ポートフォリオや投資総合報告書を作成すれば、多角的な視点で今現在の運用状況を把握できる。長期間にわたってこのデータを蓄積していくと、自分ではうまくいっていると思っている投資先が案外低利回りだったり、ポートフォリオにむらがあることに気付かされるものだ。ちなみにこのソフトでは、マイレージやクレジットカードのポイント!さえ、管理してくれる。

ポートフォリオを作って投資資産を管理できる

 ここまで書くと気付く人もいるかもしれないが、MS Moneyは一種のシミュレーションソフトである。しかも、利用するデータはまさに自分のさまざまな資産。結果は本当に自分に跳ね返ってくる。まさに真剣勝負のシミュレーションゲームソフトと言っても過言ではないのだ。これが面白くないわけがない。「Microsoft Moneyは30代から40代のビジネスパースンの利用が多い」(柏木氏)というのも、資産管理が必要になる世代であると同時に、ビジネス上のゲームが面白くなっている世代でもあるからではないだろうか。

Microsoft MoneyとMSN マネー

 このMicrosoft Moneyで一番分かりにくいところ。これは同時にこのソフトがもっとも強みとするところでもある。それはMicrosoftの金融ポータルサイト「MSN マネー」との連携である。

 「もし競合するソフトが登場しても、リアルタイムに近い多岐に渡る情報を提供するMSN マネーの機能まではなかなか提供できないでしょう。Microsoft MoneyではMSN マネー(インターネット)と密接に連携して1つのサービスを提供している。お金にまつわる情報は即時性が大事。これを提供するのがMSN マネーなんです」と柏木氏は言う。

 Microsoft Moneyは管理ソフトであり、MSN マネーは金融情報のポータルサイト。両者は相互補完関係にあるというわけだ。実際、同じチームで開発しているのだという。「サイト構成までやった」そうだ(同)

 だから先ほど「分かりにくい」といったが、それは今自分がMicrosoft Moneyのサービスを利用しているのか、MSN マネーのサービスを利用しているのか、ということが「分かりにくい」のであって、そんなことさえ気にしなければ、相互の利用は非常にシームレスで使い勝手がいい。国内外の株価や投資信託の価格情報や為替レートなどがMSN マネーを通じて自動更新され、それがMS Moneyのポートフォリオなどの画面でも反映される。また、さまざまな種類の株価チャートを表示させられるが、これはMSN マネーの機能だ。

MS Money上でMSN マネーの充実したチャート機能を表示させられる

 MS Money 2006からは、こうした情報がMoney画面上にダイレクトに表示されるようになり、さらに使い心地が向上した。そのほか最新ニュースやリサーチ情報などもMSN マネーを通じて提供される。両者の連動は、確かに便利で快適さを感じさせる部分だ。

MS Money 2006からはMSN マネーの情報がダイレクトに表示されるようになった。“金融機関からのお知らせ”なども表示可能になるらしい

使い始めると、やめられないソフト。それがMS Moneyだ

 筆者は数年間に渡って、このMicrosoft Moneyシリーズを使い続けてきた。おかげで紙の通帳もどっかに行き、MS Moneyと電子メールでたいていのことはできるようになった。後は実際のトレードで各金融機関のサイトに行けば十分だ。

 と安心していたら、とんでもないことが起こってしまった。マシンがクラッシュしてしまったのである。ちょうど忙しい時期でマシンの修復に時間をかけることになってしまったのだが、その時、一番往生したのがMicrosoft Moneyが使えないことだった。

 なにしろ自分のお金にまつわる情報のほとんどが、このソフトの中に入っている。復旧させないと自分の口座にお金が入金されたのか、引き落とされたのかさえ分からないのだ。いちいち各行のオンラインバンキングに入ったり、カードを持ってお店に行ったりしたが、面倒でならない。なんだか裸で街中を歩いているような心細い思いをさせられたものである。

 これも逆に言えば、Microsoft Moneyの便利さゆえだろう。使い始めると、やめられないソフトというのが実感だ。なお、筆者のような粗忽者のことを考えてか、Microsoft Money 2006から、大容量メディアに対応したバックアップ機能がサポートされた。ハードディスクやメモリーカード、ネットワークデバイスへのバックアップが可能で、Windows XPならCDメディアにも対応。Moneyを終了するたびや日時を決めてバックアップを取ったりすることができる。

MS Money 2006で強化されたバックアップ機能。終了するたびにバックアップを取ることもできて安心

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提供:マイクロソフト株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日