TDKブースでは、透明なアクリル製の板を振動板にしたスタイリッシュなスピーカーを参考出展している。「超磁歪パネルスピーカー」(Panel Loudspeaker with GMM Exciter)というもので、外観や音質もさることながら、スピーカーのすぐ近くにいるのに“音の出所がよくわからない”という面白い体験ができる。
硬いアクリル板を振動させるには、従来のピエゾ素子やムービングコイルなどよりも駆動力の強いアクチュエーターが必要になる。試作機では、「環超磁歪素子という、最も力の強い素子をエキサイターに使用している」(TDK)。超磁歪素子は、磁束の変化によって物理的に長さが変わり、たとえば3ミリ径の棒状の素子なら20キロもの力を発揮するという。
同社は、超磁歪素子の駆動力を効率的にアクリル板へ伝達するため、電磁石を使ったエキサイターを開発。素子にコイルを巻き、コイルに流す電流によって磁束を変化させる仕組みだ。ただ、アクリル板と超磁歪素子によるスピーカーの周波数特性は1kHz以上と少し高め。したがって、キャビネット(というか支柱)の下部にウーファーを追加している。
透明なアクリル板から流れ出す音は、その外観と同じようにクリアだ。むしろクリアすぎて、原音と少し違うのでは? などと感じるほど。「音色に関してはまだ試行錯誤しているが、今回は“音像の広さ”に着目してほしい。どこにスピーカーがあるかわからないでしょう?」。
たしかに、低域部分は下のウーファーが出所になっているのがわかるが、中高音は周囲にまんべんなく広がっているような印象を受ける。「通常、高い周波数は駆動力が小さく、軽い素材(コーン紙など)でないと出せない。そうするとスピーカーも小型化し、音が“焦点”になってしまうため、長時間の音楽鑑賞で神経が疲れることもある」。
音源の位置がわかると、人間の耳は無意識に“耳を向ける”のだという。対して、アクリル版スピーカーは音の出所を意識させない。「音楽を聴いてリラックスしたいとき、本当の“癒し”になるのでは?」(TDK)。
同社では、アクリル板を使ったスピーカーを2006年の春か夏頃に発売する見込みだという。気になる価格は、「アンプ、ウーファー込みで3万円前後ならどうでしょう?」。――安いと思います。
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