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コラム
» 2005年03月28日 09時58分 公開

“すっきりしたリビング”の夢をかなえる平面スピーカー (1/3)

あらゆるAVデバイスが薄型になっていく中で、スピーカーだけが取り残されている。さまざまな研究は進んでいるが、音がチープだったりと今ひとつ本格普及には至っていない。そんななかで、北欧からなかなか面白い平面スピーカーが登場した。

[小寺信良,ITmedia]

 先々週のことだったか、フィンランド人の奥さんをもらった友人から、「今フィンランド製の面白いスピーカーが来てるから見に来ないか」と電話があった。電話では詳しいことは分からないが、どうも平面スピーカーらしい。

 平面スピーカーは以前からいろいろな駆動方法で実用化されているが、今ひとつ本格普及には至っていない方式である。国内で比較的よく知られているところでは、STAXのコンデンサ型イヤースピーカーがあり、筆者もずいぶん昔に一台買っている。純粋なコンデンサスピーカーを作る専門メーカーは少なく、海外ではMartin Loganぐらいだろうか。

 10年以上前に、ソニーが一時期「エレスタットスピーカー」という名前で製品化したことがあるが、現在は製造されていない。これはフルレンジではなく、ツイーター部にのみ平面スピーカーを採用したものであった。

静かに広がる平面スピーカーの世界

 コンデンサスピーカーは別名静電式スピーカーとも呼ばれ、2枚の固定電極板の間に振動膜を張った、3層構造になっている。振動膜に数百ボルトの高い電圧をかけておき、前後の電極板への電圧を変化させると、静電気で髪の毛が下敷きにくっつく要領で、振動膜が一方に引っ張られる。この原理で振動膜を前後にふるわせることで、音を出すわけだ(STAX社サイトでの説明)。

 平面スピーカーでも、静電式ではない方式のものもある。株式会社エフ・ピー・エスが製品化したFlat Panel Speaker(FPS)は、以前PC用スピーカーとして話題になったことがある。これは静電気の働きによる運動ではなく、面磁石を使って、導電性の振動膜を動かすという方式だ。

 これら平面スピーカーの特徴は、ハードウェアが薄型・軽量であることもポイントの一つだが、音としても中高域の特性が良く、また空気を広い面積で平行に押すために、非常に直進性が高いという特徴を持っている。

 ただ同じ平面スピーカーでも、従来の面を平行に押し引きする方法とはまったく違った駆動方式も存在する。通常スピーカーの振動板というのは、面が曲がらず平行に空気を押すことが理想とされている。通常のスピーカーのコーンが円錐形をしているのは、剛性を増す意味もある。

 ところがこの常識を打ち破って、敢えて平面を分割振動させて音を出すという方式が近年実用化された。英NXT社がパテントを持つこの方式は、NECのVARUSTAR Tシリーズに採用されたことで、ご記憶の方も多いだろう。液晶画面から音が出るというヤツだ。またこの方式を採用したスピーカーは、PC用としてTDKがSP-NX801を始めとするシリーズを展開している。

 これと似て非なる方式のものとしては、サラウンド技術で知られる米SRS Labs社が開発した、フラットパネルスピーカーもある。これは振動板に発泡スチロールを使うというもので、周波数特性をきれいに均すために彫り込まれた溝に独自のノウハウがあるという。

 筆者もInternational CESでプロトタイプを何度か聴いたことがあるが、ややクセがあるものの、可能性を感じる奥行きのある音で、若干補正すればかなり良くなると感じた。

 この方式の特徴は、非常に安価に作れるというところである。ノウハウがあるとはいっても、結局は発泡スチロールなので、最上位モデルの「Klayman Signature」でもペアでたったの999ドルである。今ならSRS10周年記念スペシャルプライスで400ドルとなっているが、どうもこのままスピーカーの製造からは撤退するのではないかという気がする。実は以前、日本でも独自にローカライズしたモデルを発売する計画もあったのだが、頓挫してしまったようで非常に残念だ。

 分割振動方式の特徴は、音に直進性がなく、反対に拡散型の音場を形成するところである。おなじ平面が振動するにしても、静電型とはまったく逆の特性を持っているところが面白い。

フィンランド製「Sound Screen Pro」

 そんなことを考えながら、そのフィンランド製スピーカーを設置しているという六本木のイベントスペース「Super Deluxe」に向かった。その日3月18日は、フィンランドのアーティストによるクラブイベントが行なわれるのだが、そのメディアアートの上映用として設置されるのだという。

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