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“すっきりしたリビング”の夢をかなえる平面スピーカー(3/3 ページ)

» 2005年03月28日 09時58分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 各サウンドユニットには、アナログのスピーカー出力を昇圧するためのユニットが1台づつ必要となる。これは電源不要だというから、中味は単純なトランスなのかもしれない。それ以外には必要なものはなく、この会場でも使用しているのはまったく普通のAVアンプであった。

専用の昇圧ユニットがパネルごとに必要

 実際の音は、多くのコンデンサスピーカーと同じように、中域から高域にかけての伸びが良い。しかし低域はあまり出ないようだ。周波数特性は250〜22000Hzとなっており、別途サブウーファは必須となる。

 しかし多くのサブウーファでは、ローパスフィルタを150〜200Hz程度に設定していることから、場合によっては中抜けする周波数が出てくるだろう。音楽の鑑賞にはちょっと辛いが、テレビや映画などの視聴用途としては良さそうだ。

 また音の直進性が非常に高いのも特徴だ。スクリーンの正面を横に移動してみたが、真正面から30度ほど横にずれると、もう高域の特性が変わってしまう。その代わり、スクリーンの直前でも15メートルほど後方でも、音圧がほとんど変わらない。

会場の奥まで下がっても、音圧レベルはほとんど変化しない

 あまりにもリスニングポジションが狭いのでは、と聞いたところ、このサウンドユニットはある程度曲げることができるそうだ。リスニングポジションを広げたいときは、少し湾曲させて設置するといい、ということであった。

映像に集中できるスクリーン

 そもそもどういういきさつでこのスクリーン一体型スピーカーを開発したのだろうか。

 「このユニットの原理自体は、すでに15年ほど前からフィンランドのテクノロジーセンターで発明されていました。実は私の会社はこのテクノロジーセンターのすぐ隣にあり、研究員を数人知っていることもあって、以前からこういう技術があることは知っていたのです」(サーリッコ氏)

 「私どもの会社は、フィンランドでは大手の音響製品のディストリビューターなんですが、美術館やギャラリーの音響設備なども請け負っています。それらの場所では、映像作品を上映するのにスピーカーの設置が難しかったり、あるいはスピーカーを見せずに映像だけに集中させたいという要望が数多くありました。そこでこれをなんとか製品化してみようと思い立ったわけです」(同)

 今回持ってきた製品は、4:3としてはもっとも大型のものである。そのほかにも16:9サイズのものもあり、カタログには最大で2574×1508ミリのものが掲載されている。しかしこれらはあくまでも目安であって、実際には「サイズはどうにでもできる」ということであった。

スクリーン自体は分解して丸めて輸送できる。サウンドパネルはここまで曲げられないので、平面のまま運ぶ

 またサウンドユニットは、左右ステレオのほか、真ん中にもう一枚入れて3チャンネル仕様にもできる。あとはサブウーファとリアスピーカーを用意すれば、ホームシアター用としても使えるわけだ。直進性が高いため、それほど大きな音を出さずにある程度離れた場所から視聴できるのは、日本の住宅事情にも合っている。

 ホームユースとしては、本国では女性に人気が高いらしい。男性は大きなスピーカーを欲しがるものだが、女性はスクリーンだけですっきりした部屋を望むのである。これは日本でも事情は変わらないだろう。

 気になる価格だが、最小の1765×1358ミリ(4:3)で2200ユーロ、最大サイズの2574×1508ミリ(16:9)でもそれほど高くならず、2900ユーロ程度。日本円でだいたい30万円から40万円というところだろか。一番コストがかかるところがサウンドユニットだということで、スクリーンサイズが大きいほど割安になっている。

 とは言っても、いざ買うとなるとそのまえに実際の音を聴きたいところだろう。サーリッコ氏によると、IBCなどのコンベンションにも出展することも考えているという。日本はどのようなコンベンションがあるのか調べて、検討したいとのこと。また日本での代理店も募集している。

 Sound Screen Proは昨年から販売開始された、まだ新しい製品だ。ホームユース以外にも、スクリーンにマイクを埋め込んだテレビ会議用のプロトタイプも開発中だという。

 日本では、液晶・プラズマなどの大型テレビに混じって、プロジェクタも人気が高い。すべての表示デバイスが薄型化していく中で、スピーカーだけが取り残された格好になっている。すっきりしたリビングを実現するためにも、平面スピーカーは今後注目しておきたい技術だ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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