「FPD International 2005」のE INKブースでは、10月18日に報道発表を行ったカラー版E INK(マイクロカプセル型電気泳動方式電子ペーパー)を展示している。「3年ほど前にもカラー版を見せたことはあったが、今回のサンプルはしっかりと色の階調が出る」というもので、4階調(2bit)と16階調(4bit)の2つが並んでいた。
E INKは、マイクロカプセル型電気泳動式のEPD(electronic paper display)だ。画面の下に敷き詰められたマイクロカプセルの集合体に電圧をかけて画面を表示するというもので、マイクロカプセルのサイズは約40ミクロン。その中にナノレベルサイズのプラスに帯電された白色顔料と、マイナスに帯電された黒色顔料が入っており、電圧がかかると上下に移動して白黒の階調を表現する。
カラーを表示するため、試作機ではE INKパネルの上にカラーフィルターアレイを設けている。マイクロカプセル層の上にRGB+W(ホワイト)の4色を1セットとして“田”の字型にカラーフィルターを配置。反射光の透過率を下のINKが調整してカラーを表示する仕組みだ。田の字が1つの画素を構成する形になり、試作機はA5サイズ画面に1280×800ピクセルの解像度を持つという。
展示機では風景や浮世絵を表示していたが、画面が切り替わる際に、一瞬だけ白黒画面になるのがE INKらしい部分だ。「一度白黒で描画してから間の階調を埋めていく」(同社)のだという。
この画面切り替え速度の遅さにくわえ、カラーフィルタの追加によって反射光の透過率が下がり、画面が暗くなる点が技術的な課題だろう。ただし、表示速度に関しては「ある程度の道筋が見えている」という。カラー版E INKの表示速度向上は、下にあるマイクロカプセル層のスピードに連動するが、現在のモノクロE INKのほうでは、徐々にではあるがスピードアップが進行しているからだ。
たとえば現在出荷している製品は、「画面スクロールがある程度滑らかに行える」レベルになっており、さらに2006年後半には500〜600ミリ秒まで高速化したE INKが登場する予定だ。「実験室では、既に20ミリ秒(50フレーム/秒)のE INKも動いている」(同社)。
現在のところ、ソニーの電子ブック「リブリエ」や時計の表示装置など、ニッチな分野でしか用いられていないE INKだが、高速化とカラー化によって、メジャー製品への採用を狙っている。同社では、「もう少し画面切り替えが早くなれば、たとえば電子辞書などに採用される可能性が高くなる」と話していた。
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