先日ちょっと動作検証をする機会があって、初めて「Windows XP Media Center Edition」を触ってみた。日本では今ひとつ盛り上がらない、というかほとんど無視されたような存在だが、実際に使ってみると、米国人のAVに対する考え方が伝わってきて、なかなか面白い体験であった。
こういう感覚は、渡米するたびによく感じる。例えば国際便の飛行機のシートに突っ込まれている通販カタログみたいなのを見るのは、とても楽しい。日本人的にはちっともいいと思わないのだが米国人には大ウケ、みたいな感性のギャップが面白くて、飛行機に乗るたびに真っ先に手に取って見ている。
その反対に米国人には全然理解できないんだろうな、と思われるのが、日本の「ファミリーパソコン」という考え方なのではないかと思う。こう言われてもなんのことやら忘れちゃった人も多いと思うが、日本では2002〜2003年ぐらいに、確かに「ファミリーパソコンブーム」があったのだ。
代表的なのは、NECの「VALUESTAR F シリーズ」だろう。キーボードには「ファミリーボタン」を装備しており、ボタン一発で使用環境を変更できた。実際にこのタイプのパソコンは、当時ファミリー層によく売れたそうである。
パソコン自体は年々安くなっているが、それでもテレビ機能付きのそこそこのものを買えば、20万ぐらいはする。個人で20万の買い物というと、特に家族持ちは躊躇する値段だが、家族で使えるということであればコンセンサスは取りやすい。各家庭に少なくとも1台パソコンを売る、という販売戦略としては、成功した例だと言っていいだろう。
だが昨今のデスクトップタイプのパソコンを見ると、AV機能は必須となってきたが、ファミリーをターゲットにした製品は急激に衰退した。これはなにも、市場が飽和したからではないだろう。おそらく販売手法としては成功したのだが、パソコンがファミリーツールと成り得るのかという答えに関しては、「NO」だったのではないか。
かつてのファミリーパソコンは、今どうなっているのだろうか。実は筆者の友人宅でも、2年ほど前にこの手のファミリーパソコンを購入していた。これが現在どうなっているか聴いてみたところ、ちゃんとまだ使っているという。
用途としては、各家族がテレビを見たり録画したり、たまにWEBで調べ物をしたりという具合に、それなりに機能は使っている。ただし各ユーザーアカウントは設定してあるものの、結局1つのAdministratorのユーザーで、そのまま全員が使うようになったという。家族で使うようなものをいちいちパーソナライズしたり、ログインし直すような意味があんまりない、というのである。
テレビやレコーダーが共有できるのであれば、AVパソコンも共有できるのではないか、というのが、ファミリーパソコン発生の原点だったのではないだろうか。そう言う意味では、AV機能を使っているだけなら、家族での共有は可能だ。
だがそもそもテレビの視聴と録画、たまにインターネット程度の用途であれば、パソコンでなければならない理由がない。テレビにWEBブラウザが載って、レコーダがあればそれで済む話である。テレビやレコーダは、家族で共有している人は少なくない。なぜそれが可能かと言えば、それらの機器にはプライベートな情報を記憶する能力がないから、とも言える。
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