最後に、地上デジタル放送の衛星による再送信について話を聞いた。情報通信審議会が7月29日に提出した中間答申では、デジタル放送への全面移行に向けた重点施策として、中継局整備やコピーワンス放送の見直しと並び、IPや衛星を利用した再送信の検討が盛り込まれている。具体的には、2007年内に地上波デジタル再送信の開始を目標として、技術条件などを確認する実証実験に着手。年度内には結論を出すという。
既にスカパー!側は前向きな姿勢を示しており、ハイビジョン放送の再送信実験を11月から実施する計画だ。実験では、光ファイバーで地上デジタル放送を横浜管制センターに伝送し、H.264 TSにエンコード、衛星に向けて送出するという手順になる。
「現在のデジタルハイビジョンはビットレートが36Mbpsあり、27MHzのトランスポンダ1本で1ストリームしか送出できない。しかしH.264が使用できれば、ハイビジョン放送を従来の3分の1から4分の1で送信できる」。これは、現在のSD放送と同等のビットレートだ。
この場合、受信側は既存のスカパー!アンテナが使用できるものの、エンコーダやデコーダは別物のため、視聴者宅のスカパー!チューナーを変更する必要が生じる。しかし、諸島部を含む全国のスカパー!視聴者が地上デジタル放送を受信できるようになり、視聴可能世帯は飛躍的に拡大するだろう。
JSATでは、11月の実験開始に備えて既にH.264のエンコーダを発注済みだ。H.264の品質評価をはじめ実験することは多く、手探りの状態で進まなければらない。「もとの放送波にどれだけの付加情報(番組情報など)をくわえるのか、まだわからない。画質を確保しながら本当に(トラポン1つに)3本入るのか。実験することは多い」。
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