「『BRAVIA』は予想以上。PSPも好調」――ソニーが10月27日発表した2005年7〜9月期連結決算(米国会計基準)では、“エレキのソニー”復活へ兆しも見えてきたが、年末商戦の見方は慎重だ。
状況はまだまだ厳しい。営業利益は前年同期比51.9%増の659億円となったものの、最大の増益要因は厚生年金基金の代行返上益735億円。エレクトロニクス分野も一部を除いて不振が続く。
売上高は前年同期比ほぼ横ばいの1兆7030億円、税引き前利益は同50.8%増の954億円、純利益は285億円。
エレクトロニクス分野は、売上高は前年同期より0.3%減の1兆2161億円、営業利益は同2.5倍の173億円。うち639億円が代行返上益で、これを除くと540億円近くの営業赤字。
テレビ事業の営業損益は、ブラウン管テレビの不振に液晶テレビの利益の薄さが加わり、377億円の赤字(前年同期は48億円の営業赤字)となった。
復活の兆しはある。米国で8月に先行投入した液晶テレビ「BRAVIA」は、当初の予想以上に好調で、米国内の液晶テレビ販売シェア30%を達成したという。10月に発売したばかりの国内でも、1週間の液晶テレビ販売シェアで19.5%を占めたとしている。
ただ、液晶はまだ利益につながっていない。販売台数は伸びているものの、コスト圧縮が十分でなく「まだ利益が出る段階ではない」(大根田伸行CFO)ため。液晶事業の黒字化は、韓国Samsung Electronicsとの合弁会社・S-LCDからのパネル調達が本格化する2006年下期になる見通しだ。
ハイビジョン対応のDVカメラ「HDR-HC1」が好調で、ビデオ事業の営業黒字は前年の15億円から214億円に急伸した。PC「バイオ」を含む情報通信分野も、コスト削減効果などで同3.7倍の93億円の営業黒字を計上。ウォークマンなどオーディオ機器は不振で、14億円の営業赤字だった(前年同期は11億円の営業赤字)。
半導体の売上高は前年同期比22.4%増の1838億円だったが、営業損益は197億円の損失(前年同期は9億円の黒字)。CCDの単価下落やシステムLSI新工場などへの投資、CELLプロセッサの開発費用などがかさんだ。
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、売上高、利益とも過去最高を記録した。ウォークマン携帯や、高画素カメラを搭載したGSM機などが好調。総出荷台数は前年同期非29%増の1380万台だった。
ゲーム分野は好調だ。売上高は前年同期比79.1%増の2142億円、営業利益は前年同期のゼロから82億円に伸びた。PSPとプレイステーション 2(PS2)がハード、ソフトともに大幅な増収。期間中の出荷台数は、PS2が前年同期比2.5倍の501万台、PSPが375万台。ソフトは、PS2向けが5000万本(同11%減)、PSP向けが900万本だった。
映画分野は、前年に好調だった「スパイダーマン2」の反動で同17.2%の減収。営業損益は66億円の赤字に転落した。金融分野は増収増益だった。
第2四半期の業績は想定を上回ったが、通期の業績予想は据え置いた。「11、12月の年末商戦で他社がどんな商品・値段でくるか分からない。コンサバに見えるかもしれないが、今の状態が続くと考えるのは楽観的過ぎると思う」(大根田伸行CFO)
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