ソニーは9月22日、中長期経営方針を発表。「エレクトロニクス事業の復活」をかかげたプランを提示した。
同社が7月28日に発表した2005年4〜6月期連結決算は、営業損益が152億8200万円の赤字(前年同期は97億7400万円の黒字)となっていた。なかでもテレビを筆頭としたエレクトロニクス分野の落ち込みが目立ち、エレクトロニクス事業は363億円の営業赤字(前年同期は83億円の黒字)を計上していた。
代表執行役会長兼グループCEOのハワード・ストリンガー氏は、「ソニーだけが唯一の選択肢ではないことを認識する必要がある」と自らを戒めながらも、「エレクトロニクス製品はコモディティ化しているが、その中で差別化された製品を作り出していくことが基本方針だ。“Sony United”として結束し、積極的な競争をしていかなくてはいけない」と全社一丸で状況の改善にあたる考えであることをアピールする。
そのために組織改革や人員削減、土地・株式の売却などといった合理化を進める一方、エレクトロニクス、ゲーム、エンタテインメントの3分野に集中投資していく考えを明らかにした。「最大の課題は“エレクトロニクスの復活”だ」(ストリンガー氏)
エレクトロニクスの復活のため、15の不採算事業について撤退も視野に入れた見直しを行うほか、継続するカテゴリについても20%にもおよぶモデル数の削減を行い、スリム化を図る。不採算事業や削減されるモデルについて具体的な内容は語られなかったが、製造拠点の統廃合を含めたこれらの絞り込みによって、2007年までに1300億円のコスト削減を目指すとしている。
「テレビの復活なくしてソニーの復活はない。打つべく手を打って2006年後半には黒字化を目指す」――代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏がそう発言したように、テレビ事業の再建も大きな目玉だ。
新ブランド「BRAVIA」を冠した薄型テレビ新製品が既に発表されているが、CRT/LCD/リアプロの各製品について、黒字化を目指すための再建策が提示された。
CRTは生産拠点の集約を進め、LCDはパネルの自社調達(S-LCDからの調達)を加速させる。リアプロについては、SXRDを搭載したモデルは現在と変わらずハイエンドと位置づけるが、HLCD(高温ポリシリコン液晶)を搭載したモデル(BRAVIA KDF-50E1000など)については部品を中国から調達することでコストを下げ、普及価格帯モデルとする。また、基本設計部門を日本に集約し、共通シャーシなどを開発することで部品点数の削減も図る。
「S-LCDの稼働によって、私たちは世界で最もコスト競争力の高い液晶パネルを手に入れた。市場は確実に大型化へ移行しているが、S-LCDのソニーパネルならばプラズマと互角に大画面の市場で戦える。フラットテレビは日本はもちろん、アメリカでもまだまだ大きな伸びが見込める。BRAVIAで巻き返しを図りたい。確実な手応えを感じているところだ」(中鉢氏)
また、2005年1月のCESで同社が提案した、映像に関するすべてのデバイスをHD化するという「HD World」構想についても、2007年には対応機器を現在の35%から2倍以上となる75%まで拡大する意向であることを明らかにした。
そのほかにも、今回発表された中長期計画にはカンパニー制の廃止やプレイステーション3への注力、研究開発体制の強化、半導体・デバイスへの集中投資、業界標準技術の積極的な取り込みなど多岐にわたるが、それは同社が直面している課題の多さを示すものでもある。
「“世界のソニー”を復活させたいと考えている。今こそが始まりであり、(困難もあると思うが)ソニーの戦士として戦っていかなくてはならない」(ハワード氏)
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