――次に日立製作所「PJ-TX200J」ですが、こちらはシリーズ3世代目ですね。
麻倉氏 初代のPJ-TX10Jから2代目のPJ-TX100Jになって、非常に大きなブレイクスルーがありました。日立のようなテレビだけをやってきたメーカーが映画画質をやろうとしたときに、それまでの技術を意味否定することになります。PJ-TX10Jの時はその迷いがあって、まだ習作という感じだったのですが、PJ-TX100Jになってかなり改善されました。ですが、まだテレビ的な画作りだったのも事実でした。
それが今回のPJ-TX200Jは、かなりの程度、映画的な画作りに変えてきています。勘所がつかめてきたという感じる開発者がテーマにしたのは“リアリティとファンタジー”。リアリティというのは、これまでのハイビジョンらしい鮮鋭感なのですが、もう1つは、いい意味での加工をして映画の世界をあまり見せすぎずにファンタジーをもった物語の世界を見せていこうというアプローチです。
このあたりはガンマコントロールをどう操作するかというのがポイントになるのですが、同シリーズではPJ-TX100Jからの優れた機能として「ガンマイコライジング調整機能」というのがあります。これは、上部のグレースケールと下部の調整部分が連動していて調整の度合いがひと目で分かるし、調整操作もリモコンで手軽に行えるものですが、このもっとも暗い部分の値が11%の白から2%の白になりました。これはネイティブなコントラストも向上したからできことです。さらにアクティブアイリスも搭載しました。白も上手くコントロールできています。使い方としては、あまりアクティブを効かせないモードで観るのがよいでしょう。
――アクティブアイリスといえば、松下電器産業のTH-AEシリーズが早くから取り入れていましたね。シリーズ最新機種「TH-AE900」について教えてください。
麻倉氏 アクティブアイリスは他社も新製品に搭載してきましたが、TH-AE900の映像を観るとやはり松下のアクティブアイリスは他社に先んじて進んでいる印象がありますね。
アイリスを絞ると確かにコントラスト感は高まるのですが、暗いシーンで明るい部分があるといったケースで使うと明るい部分まで暗くなってしまいます。ハリウッド画質をうたうAEシリーズのアクティブアイリスは、映像の大きさにあわせて白ガンマをたてることで、全体は暗いが白くなるべきところは白くなるのが特徴。今回のTH-AE900は、そのようなシーンの明暗がひんぱんでも、シームレスに映像変化が行われるようになりました。
TH-AEシリーズは今回で6代目なのですが、カラーリストの目に委ねたハリウッド画質に見られるように、本来あるべき色はこうだ、本来あるべき階調性はこうだと、自分たちの尺度をある意味放棄してまでして高画質を追求しています。このような本物志向は、松下のという大衆製品企業の中では非常に異様なカルチャーですね。
そういう意味でTH-AE900は、松下が全力で取り組んできたホームシアタープロジェクターの集大成的な製品に仕上がっていると思います。そこで次の製品は、これまでの蓄積を活かし、ハイエンドに挑戦して欲しいと思います。
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