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今年お薦めの最新プロジェクター麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)

» 2005年12月02日 10時54分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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セイコーエプソン「EMP-TW600」

――次はD5パネルの供給メーカーでもあるセイコーエプソンの「EMP-TW600」について。

麻倉氏 “パネル原産地”という立場を生かし、デバイス作りからセットにまとめるまで垂直統合できる稀有なメーカーなのがエプソンです。今回のEMP-TW600は、アッパーバージョンとしてのEMP-TW500と、普及バージョンとしてのEMP-TW200を一本化してきた製品。エプソンの画作りは、他社のような波乱のモデルチェンジはそれほどなく、最初から水準の高い画作りをしてきました。今回はテレビ的なEMP-TW200と、映画的なEMP-TW500をうまく統合しています。明るくハリのある画と階調の滑らかさを両立してますね。

photo セイコーエプソン「EMP-TW600」。製品レビューはこちら

 特にエプソン製品の特出している点は、イコライジングの設定。一見、複雑なのですが、使いこなせば、かなり自分のイメージに近い映像をつきつめることができます。さらに今回のEMP-TW600は、オートアイリス機能やシネマフィルターを採用して、黒の表現力とい色再現性を高めています。これも効いていますね。

三菱電機「LVP-HC3000」

――以上、D5パネル採用の液晶プロジェクター4モデルを聞いてきましたが、今年忘れてはいけない1台がDLP陣営にありますね。

麻倉氏 三菱電機「LVP-HC3000」ですね。これは、三菱プロジェクターの歴史に残るぐらいの優れた製品です。圧倒的なコントラストと色ノイズの少なさなどから、これまでは100万円以上のハイエンド向けにDLPの画質がもてはやされてきました。しかしここにきて、SXRDやD-ILAといったLCOS陣営が価格を下げてハイエンドに食い込み、ミドル/ローエンドからは液晶が着実に高性能化を遂げてきてくるという状況で、現時点では720PどまりのDLPでの限界が見え始めていたのも事実。その存在価値が問われていたのですが、このLVP-HC3000の映像は「おっ、やはりDLPはすごいぞ」とあらためて実感させてくれました。

photo 三菱電機「LVP-HC3000」

 やはりネイティブのコントラストが高いというのが、液晶との圧倒的な違いですね。動的アイリスなどを使っていくら数値上のコントラストが高まったとしても、やはりネイティブでのコントラストが高いものと、低いものでは違います。ミラーのオンオフという物理的なコントラストから生まれる、深く、安定した、ゆるぎのない“黒”というものが、今回のLVP-HC3000では非常に感じられます。

 そしてDLPの弱点と言われていた暗部の階調不足から発生する誤差拡散ノイズが、このLVP-HC3000はとても少ないのです。基本的なS/Nの良さ、黒の締りに加えて、色再現がとても優れています。DLP本来の深みを持った色の味わい感が出ていますね。黒が沈んだところのちょっと明るい部分を表現できるガンマ感も絶妙ですね。素晴らしい。DLPを知り尽くした人が、調整にじっくり時間をかけて作り上げてきたのが分かります。

プロジェクターは2006年には、フルハイビジョンへ怒涛のように進化するでしょうが、この720Pプロジェクターは、そんな中でも、あえて持っていたいと思わせるにたる逸品ですね。


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麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント

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