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今年お薦めの最新プロジェクター麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2005年12月02日 10時54分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――VPL-VW100とDLA-HD12Kの“違い”をもう少し具体的に説明してください。

麻倉氏 アバックのイベントでは、NHKのBS hiで放映した「音楽夢くらぶ」を視聴に使いました。ソニーでは松田聖子の最新エアチェック版です。この映像は、黒に階調感があり、なおかつ非常に白情報が多いので白の階調感も問われるという、難しいコンテンツです。VPL-VW100は、このハイキーな映像を非常に安定した階調感で表現し、なおかつ聖子さんの肌色の微妙な色合いをしっかりと映し出していました。細かい階調感の表現力、滑らかさ、自然な細密感覚というのは、QUALIA 004からの伝統ですね。聖子さんはラメの入ったファンデーションを使っていたのですが、その光り方も絶妙でした。

photo ソニー「VPL-VW100」

 一方、DLA-HD12Kでは「音楽夢くらぶ」の松浦亜弥です。これは昨年、イベントで使って有名になったコンテンツです。ここでシームレスな感覚を持ったグラデーション感が、この歌手の若々しくみずみずしい肌を美しく再現していました。黒の微妙な表現がとても秀逸でした。VPL-VW100はコントラスト感で押していく“力強さ”で一般受けする映像なのですが、DLA-HD12KはDレンジをむやみに広げず、その間を濃密にして三管式に近い“優しい”映像を作り出すことに成功しています。

photo 日本ビクター「DLA-HD12K」

D5パネルの競演――720Pを制するのはドレ?

――720Pの液晶プロジェクターは、セイコーエプソンのD5パネルの競演といっていいでしょう。三洋、松下、日立、エプソンが年末商戦に向けて、揃ってD5パネル採用の新製品を投入してきました。それぞれの特徴を教えてください。

三洋電機「LP-Z4」

――まずは三洋電機「LP-Z4」。この製品は、AV専門誌などでも高い評価を受けていますね。

麻倉氏 LP-Z4は、今年のD5パネル搭載機の中でももっとも印象深かった1台です。とにかく、完成度が高い。世代を経ていくごとに、確実に完成度が高まっていますね。Zシリーズ初代のLP-Z1は、それまでの同社プロジェクターの業務用的な流れを変えて、まったりとした滑らかな映像を提案しました。次のLP-Z2はテレビの延長的な明るさを求めて家電志向に変更しましたが、LP-Z3ではLP-Z2の反省を生かしてLP-Z1の映画路線を復活してきました。LP-Z4は、そのLP-Z3の良くなり方より(感覚的に)2倍ぐらいさらに良くなった気がします。

photo 三洋電機「LP-Z4」。製品レビュー記事はこちら

 映画画質を持ちながら、再現性が安定し、確実に安定した輪郭感と階調感とコントラストの広さを同時に実現しています。映画的なマッタリとしたものを持ちながら、鮮鋭な輪郭を持ち、さらに滑らかさも兼ね備えているのです。非常に画作りがうまくなっていますね。同じ開発者がZシリーズを担当しているので、ノウハウが蓄積されているのでしょう。電動シャッターも意外とポイントが高いのです。ホコリの侵入をさけるためにはシャッターは閉めた方が有利。天井に吊った場合でも自由にシャッター開閉ができ、持ち歩く際にも安心感があります。

 三洋電機は今いろいろたいへんでしょうが、野中ともよ会長にはプロジェクター部門をキチンと残してもらい、ワンアンドオンリーな商品として勝負してもらいたいですね。

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