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インタビュー
» 2005年12月15日 02時41分 公開

“プロの手調整”を超えた音場補正――ソニー ハイエンドAVアンプ「TA-DA9100ES」インタビュー(4/5 ページ)

[本田雅一,ITmedia]

壁反射による乱れを感じさせない補正結果

 こうした音場補正機能のデモを行う場合、ほとんどはサラウンドを含んだシステムで行うことが多い。その方が音場が整うというメリットを実感できるからだ。一方で2チャンネル音声での補正となるとむしろ厳しい。ボリューム感のあるサラウンド音場は合わせやすいが、2チャンネル音声の場合は少しの音質低下も感じられる。

 浅田氏によると「2チャンネル分のスピーカーしか持っていないユーザーもあると思いますが、DCACは2チャンネルソースでも、その効果をハッキリと感じていただけます」と話す。ならばすぐにでも聴いてみなければなるまい。早速、デモルームでの試聴を行った。

 まず理想的な配置での試聴を行い、次にコンパネ2枚をL字型組み合わせて右チャンネルのスピーカーを囲むように配置。これは部屋の隅にスピーカーを置いた場合を想定している。すると周波数特性に乱れが起こり、右側の音場に拡がりが失われ狭くなり、ややくぐもった音に感じる。

 この状態でDCACを用いて音場補正。DCACの動作モードは“フルフラット”、“フロント・リファレンス”、“エンジニア・リファレンス”の3モードがあるが、フロントリファレンスの場合はフロント2チャンネル分の補正を行わないため、ここではフルフラットに設定した。

 すると狭苦しかった右チャンネルの音場に拡がりが出て、左右のバランスがよい気持ちいいサウンドステージが広がる。なるほど、これはスゴイ。しかも聴感上、情報の欠落も全く感じさせないのだ。

 次にエンジニア・リファレンスを試す。こちらはDA9100ESの音質チューニングが行われた場であり、金井氏の仕事場でもある試聴室と同等の音響特性を実現するモード。同氏の試聴室はほぼ正方形だが、強い反射音や定在波を抑えるように工夫されており、そこに7本のB&W製Martix 801が並ぶ環境である。

 音質調整作業は残響をほとんど排除した部屋で行われることもあるが、この金井ルームはほどよく残響が残されており、わずかに心地よい響き、余韻が残されたチューニングというのが個人的な感想だ。

 実際、エンジニア・リファレンスでの調整結果は、ある意味、遊びのないフルフラットの音に比べると、ほんの少し良い音を聴かせようという演出が入る感じだ。ただし、いずれの場合も手持ちのスピーカーが持つ個性・音色は薄くなる。フロントスピーカーの個性を生かしたいならば、フロント・リファレンスを選択すべきだろう。しかしその場合はフロント左右チャンネルのバランスを合わせ込むことはできず、全体的な補正も比較的緩やかなものになるので、環境に合わせて選ぶ必要がある。

 個人的には“音の良い民生用の多バンドグラフィックイコライザ”というのが、そもそも眉唾だと思っていたため、目から鱗が落ちる思いだった。購入者はぜひ、この機能で徹底的に遊んでみるべきだ。その中から自分の好きな音を探していけば良い。

 浅田氏は「32ビット浮動小数点で情報の欠落が起きず、さらに処理速度の面でも端折らずに完全な演算を完了させる効率の高いアルゴリズムを作ったことで、高精度の多バンドグラフィックイコライザを実現できました」と話す。

“しばらくはこの機種で”と金井氏

 自動音場補正は大変便利な機能だが、実際に音が良くなるかと言われると、これまでは切り口によって異なるという印象があった。必ずしもすべての面で良くなるとは限らない。これは多くの既存ユーザーが感じていることだろう。

 DCACに関しても、フロントスピーカーの“味”を生かしたまま、その補正機能を完全に生かすことはできない。フルフラットおよびエンジニア・リファレンスは、いずれもフロントのメインスピーカーが持つ音色を補正するため、スピーカーが持つ個性は薄まる。

 最新ということもあり、現時点でのベストともいえる機能だが、まだこの先に進化する可能性はあると感じた。しかし、オーディオアンプとしての完成度は、力ずくでS-Masterの抑え込んでナチュラルさを演出していたDA9000ESよりも、ずっと高い表現力を持つ。これはS-Masterという方式におけるひとつの完成系と言えるかもしれない。

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