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» 2006年01月13日 11時29分 公開

DVDレビュー:れこめんどDVD「ジャッカス vol.1」 (1/2)

これは「ファイト・クラブ」の“徹底破壊プロジェクト”の具現化なのか。あるいは単なるバカなのか。校長室の机の上にウンコして「想像力が権力を奪う」って言ったの誰だったっけ? そんな感じ。

[サトウツヨシ,ITmedia]

「ジャッカス vol.1」

発売日:2005年12月9日
価格:3129円
発売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
上映時間:126分(本編)
製作年度:2000年
画面サイズ:スタンダード(フルフレーム)
音声(1):ドルビーデジタル/2.0chステレオ/英語音声(2):コメンタリー

 DVカメラでゲリラ撮影した自虐罰ゲーム&ドッキリカメラ番組がMTVで放映されるや全米で話題になり、映画にまでなってしまった「ジャッカス」。DVDはvol.2、vol.3から1年前に発売されていたというヒネリっぷり。「jackass=マヌケ」と自ら称するほど計算高い、ヤツラの企みについて考えてみました。

いい年した大人が涼しい顔してバカをやらかす無意味の意味 〜社会現象としていかがなものか〜

 「ファイト・クラブ」の原作で知られる過激な作家、チャック・パラニュークの新作「ララバイ」(早川書房)の解説で川本ケンという人が、「ジャッカス」のバカげた悪戯の数々は“正確に、「徹底破壊プロジェクト」の一端と言えるのだろう”と指摘しているのですが、まったくもってその通りッス。

 野外の簡易トイレに入りクレーンで逆さシェイクされてウンコまみれになってみる。肥溜めに入ってみる。ゾウのウンコの山にダイブしてみる。腸内洗浄してたくさんウンコを出してみる。ガスが溜まったので町のヨガ教室に飛び入りしてオナラをしまくってくる。生タマゴをたくさん食べてゲロを吐きまくる、などなど。

 やってくれますジャッカス組。タブーを犯すことは反逆です。小学生にでもできる“理由あり反抗”、それはウンコとゲロに他なりません。校長室の机にウンコして「想像力が権力を奪う」と登場人物に言わせたのは村上龍の「69(シックスティナイン)」だし、パイ大食い競争でゲロをぶっ放すことで町の人々に復讐するというエピソードが挿入されていたのは「スタンド・バイ・ミー」でした。

 この際、パゾリーニの「ソドムの市」も、伝説のアダルトビデオ、安達かおるの「蒼奴夢の宴」も根っこは一緒です。ついでにウンコネタの映画として「PARTY7」も押さえておきたいくらいです(イベント上映時には「みぞた商店のうんちグミ」が振る舞われるという粋な計らいも……)。

 つまり表現とウンコ、反権力とゲロはいつも隣り合わせと言えるのです。ピンと来ない人は、松沢呉一「ウンゲロ」、五味太郎「みんなうんち」、大江健三郎「河馬に噛まれる」を読みましょう。

 「ジャッカス」が全米でウケた理由。それは大げさに言うならば9.11後のアメリカがハマッてしまったナショナリズムに対するカウンターカルチャーなんだと思うのです。だから本作は、「お笑いウルトラクイズ」よりも「電波少年」よりも「探偵ファイル」よりも、やっぱりさすがアメリカ、ぶっ壊れてるなーと思うのです。

無意味なバカ行為の連続、でも見終わってスカッとするワケ 〜映像としてどうか〜

 こういうのを日本のTVでやると、大げさなリアクションにセリフのテロップが付いたり、VTRをスタジオで見ながら皆でコメントしたり、さらに最悪なことにクイズ形式にするばかりか答えはCMの後とかいって同じシーンをリピートしたり、とにかく演出にムダが多いものになりがちです。

 「ジャッカス」は胸クソ悪いバカ行為の連続なのに、なぜか見終えてスカッとします。その秘密は、1ネタ10秒でガシガシつなげていくグルーヴ感にあると言えるでしょう。

 テンポのよい演出、つなげ方はミュージックビデオ的。さらに確実に言えるのはスケボー、スノボをはじめとしたXスポーツ・ビデオの撮影手法--広角レンズで被写体を追っかけていく感じを多用することで、緊張感と気持ちよさが渾然一体となったライブ映像を実現しているのだと思います。

 そこで思い当たるのは、ゲリラ撮影が得意なプロモビデオ、スケボービデオ上がりの映画監督、スパイク・ジョーンズなのですが、やっぱし! 「ジャッカス」ではエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされています。

 プロモビデオ集「DIRECTORS LABEL スパイク・ジョーンズ BEST SELECTION」を見れば、雰囲気の似た映像が見つけられたりして面白いです。

ま、要は手持ちのDVカメラの映像なので、大画面、サラウンドはこの作品を鑑賞するには無用です。

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