機能一辺倒ではなく、室内インテリアとの調和も目指したデザイン性の高い生活家電――デザイン家電が注目を集めている。Amadanaや±0、Bang&Olufsenなどの製品が例としてあげられることが多いが、今年で23年目を迎える三洋電機の「it's」もシリーズで統一されたシンプルなデザインを持ち、デザイン家電の先駆者ともいえる存在だ。
it'sシリーズが販売開始された1984年といえば、「デザイン家電」という概念がまだ希薄だった時代。it'sシリーズ誕生の背景やこれまでの道程を、ブランド本部 生活研究ユニット デザイン開発部の太田光俊氏と、営業グループ コンシューマ国内営業本部 国内営業ユニット 営業企画部 プロダクツ企画課 主任企画員の齋藤健一郎氏に聞いた。
it'sシリーズがデビューした1984年当初のラインアップは、炊飯ジャー、トースター、ポット、コーヒーメーカー、掃除機、ホットプレート、アイロン、ドライヤー、電気カミソリの9品目10アイテムで、調理器具を中心とした製品が用意された。
太田氏: it'sシリーズの企画自体は製品化の2年前となる1982年からスタートしていました。それまで単身者向けの製品が少なかったので、大学生などを対象にアンケートを行ったのですが、「これまでの家電はカッコ悪い」という意見が多かったので、ある意味トンガッた製品としてシリーズが企画されました。
太田氏: そうしたデザイン的な要素も盛り込みながらも、it'sを単純な「家電」ではなく一人暮らしに必要な「ツール」、――私たちは一人暮らしのベーシックラインと呼んでいますが――として捉えました。一人暮らし用の家電イコール「小型」「低価格」というだけではなく、時代の流れに沿ったプラスアルファを加えていったので、23年にもわたるロングセラー製品になったのだと思います。
2005年11月に発表された2006年度シリーズは、「Simple Basic Compact」というシリーズの基本コンセプトに加え、昨今の注目キーワードである「健康」「清潔」「省エネ」「省時間」という4つのポイントをプラスした。
齋藤氏: 2006年度シリーズに含まれているジャー炊飯器(ECJ-HS35)は5ミリ厚さの炊飯釜を採用するほか、健康によい発芽玄米などもふっくらと炊きあげる「発芽玄米コース」を搭載しています。一人暮らし向けの炊飯器といえば通常は3合炊きですが、3.5合炊きとすることで、レトルトの具を使った炊き込みご飯などもおいしく作れるように工夫されているのです。
太田氏: シリーズの開始時、基本のボディカラーは「トラッドブルー」でした。日本人が古くから馴染みのある藍色やブレザーの色合いをイメージしたものですが、当時は家電らしくない色だと社内でもかなり議論がありました。ボディカラーは2002年から「シルバーメタリック」に変更されましたが、これはインテリアの基調色がシンプルになってきたという時流の変化に対応したからです。
色が変更されても、どの製品もスッキリしたデザインとなっているのは、基本となるコンセプトがしっかりとしているからですね。
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