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次世代DVDへの期待と要望麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2006年04月01日 16時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――ポニーキャニオンのHD DVD 3作品の中でも、特に「夜桜」が高画質と評判ですね。

麻倉氏: MPEG-4 AVCが、少ないビットレートでも高画質なのは前述しましたが、「夜桜」はそのコーデックで転送レートになんと24Mbpsも使っているのです。MPEG-4 AVCはMPEG-2に比べて同画質で1.5〜2倍も圧縮効率が高いといわれています。つまり24Mbpsなら36〜40Mbpsの映像と同等の高画質になるという計算なのです。

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 “ディティールに神が宿る”というたとえがありますが、細かく解像するという感じでSDでは体験できない映像が見られました。これは、1つはビットを多く与えたということもありますが、「夜桜」の場合はもとのマスターが高画質というところが大きいですね。いずれにしても、大容量が売りの次世代DVDでも、マスター画質と圧縮効率は非常に重要ということです。画質的な向上が、ビットを使うことで実現できるのです。

――次世代DVDは映像とともに音質の良さもポイントですよね。

麻倉氏: ポニーキャニオンのHD DVD 3作品はいずれも非圧縮のリニアPCMで収録されているのですが、特に5.1chリニアPCMの音がすごいですね。ただし、例えば「さくら nostalgia」は48Kbps/16ビットの5.1chリニアPCMを採用しているのですが、これだと音声だけでなんと約7Mbpsも必要になるのです。

 それでも、コンテンツ制作の現場では「次世代DVDにはリニアPCMかロスレス圧縮での収録を」といった要求が非常に高いそうです。そうなると重要になるのが容量。HD DVDは2層で30Gバイトですが、BD-ROMは2層で50Gバイトになるので、その分ビットを贅沢に使えることになります。例えば、HD DVDの場合は音声が圧縮オーディオだったのが、BD-ROMの場合はリニアPCMで収録できるといったケースも出てくるでしょう。とはいっても、BD-ROMは当初は1層25Gバイトのものが多いですので、ある時期まではこの25Gバイトを上限にしてコンテンツが制作されることになるでしょう。

 もっとも、次世代DVDの2方式両方をリリースするといっているワーナー・ホーム・ビデオとパラマウントは、いずれも「2方式は、同じファイル」と言っています。当面は、2方式で映像や音声が違うというケースは発生しないでしょうね。ポニー・キャニオンの「夜桜」も同じファイルでBD-ROMでも登場します。だから、今回の「夜桜」の素晴らしさは、HD-DVDやBD-ROMというメディアを超えた、まさにMPEG-4 AVCというオープン・フォーマットの凄さなのですね。

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