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“パンダスーツ”を見てきた

» 2006年06月16日 17時13分 公開
[ITmedia]

 映画やテレビの企画製作を手がけるビルドアップが法人向けにレンタルを開始したアニマトロニクススーツ(着ぐるみ)「ハイクオリティ・スーツ」の第1弾が「パンダスーツ」。映画やCM、テレビ撮影など多目的に使用できる汎用の着ぐるみとしては類を見ないほど精巧だという“パンダ”を見てきた。

photo とある河原に登場したパンダ

 実際に見たパンダスーツはその体型や毛皮も非常にリアル。胴体には適度な丸みがあり、あたかも本物のよう。とても中に人が入っているような感じはしない。着ぐるみというと、どうしても中に人がいることを意識させてしまうが、パンダスーツは演技者がインナースーツを着用したうえで、毛皮を装着する二重構造とすることでこの課題を克服しているのだという。

photophoto

 「最大の特徴はインナースーツと毛皮を組み合わせた2層構造です。演技者の動きやすさを確保するほか、インナースーツと毛皮の間に適度なアソビを作ることで動物らしい体形を作り出しています」(同社)

 毛皮はハリウッドの映像作品にも使用される素材を利用している。1000万円以上というパンダスーツの制作費のうち、半分以上をこの毛皮の費用が占めるというから驚き。実際に触れることはできなかったが、見る限りではとても着ぐるみとは思えない質感だ。

photo ごろーんと

 動物らしいリアルさを追求するためには豊富な表情も欠かせない。パンダスーツは目/まぶた/まゆ毛/耳/口/上唇/下唇の各所に合計14個のラジコン用サーボモータを搭載、多彩な表情を作り出せる。まぶたは上下独立して操作できるので、ウィンクも可能だ。表情の操作は内部の演技者ではなく、スタッフが3人がかりで行う。

photo キュート
photophoto 多彩な表情を見せるパンダ。目がぐるりと動くのはとてもリアル
photophoto 表情は3人がかりでラジコン操作(左)、操作用のプロポは一般のラジコン用を改造。写真はまぶた操作用(右)

 頭部には演技者が外部を確認するためのCCDカメラも搭載されている。カメラの映像は演技者が装着したグラストロンに映し出される。パンダの顔にのぞき穴があっては台無しだからだ。ただ、CCDカメラは眉間に装着されているため、鼻が邪魔になって足元は見にくいそうだ。

photo みけんにCCDカメラ

 頭部は軽量なFRPとアルミを中心に構成されているが、14ものサーボモータとCCDカメラを搭載した影響もあって「結構重たい」(同社)とややトップヘビーな様子(モーターやカメラの駆動用バッテリーは背中部分にレイアウトされる)。暑さも含めた演技者への負担もあって「演技は20分が限度」とのこと。また、パンダのように4本足歩行と2本足歩行を行う動物の場合、首の可動範囲をどのように作り込むかは非常に難しく、そこは課題として残っているのだという。

 映画など特定用途は別として、従来ここまで精巧な汎用の着ぐるみを製作することは前例がないという。今回はテレビの企画(NHK教育の「天才テレビくんMAX」)とのコラボレーションで製作が実現したと言うが、パンダのほかにも宇宙服やゴリラやクマなどへの需要もあるそうで、今後も機会があれば「ハイクオリティ・スーツ」のバリエーションを増やしていきたいそうだ。

photo 散歩中の犬もほえる

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