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コラム
» 2006年07月05日 19時32分 公開

電車の中の「iPod」 (2/2)

[芹澤隆徳,ITmedia]
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 音漏れの解決策としては、音楽が聴きにくいとき、ボリュームを上げるのではなく、騒音自体を抑えることが考えられる。電車の中で音楽を聴くのであれば、密閉型のヘッドフォンかノイズキャンセリングヘッドフォンを使い、ボリュームは控えめにする。先日、JAL(日本航空)が国際線のファーストクラス乗客を対象にBOSEのノイズキャンセリングヘッドフォンを無料で貸し出すというニュースもあったが、的を射たアプローチだろう。

photo BOSEのノイズキャンセリングヘッドフォン「QuietComfort 2」

 しかし、これだけでは音漏れの問題は解決できない。音漏れしている人の多くは周囲の視線に気づくとリモコンに手を伸ばすが、それを承知で聞き続ける厚顔な輩もいるからだ。

 たいていは学生っぽい若い男性で、「iPod」を使っているケースが多いようだ。なぜ分かるかといえば、これみよがしにホイールを操作していることが多いから。そして聴いているのは、リズムがはっきりとした洋楽だ。演歌やクラシックというケースは聞いたことがない(アニメソングは一回だけ聞いたことがある)。

 彼らは最先端のiPodを持っていることを自慢したいのだろうか(実際、iPodの新製品が出ると目撃例が増える)。それとも“音楽好き”をアピールすることで無意味な自己顕示欲を満たしているのだろうか。よく分からない。車に大きなウーファーを積み、迷惑をまき散らしながら走っている連中もいるが、やっていることは、そのミニチュア版である。少しでも心当たりのある人は、電車の窓に自分を映して一度考えてほしい。

 余談になるが、先日、東急田園都市線の中でみかけたケースは、ある意味すごく印象的だった。時間は終電間際の12時過ぎ。この時間帯は、仕事帰りのサラリーマンで“ほぼスシ詰め状態”だ。そんな中、スーツ姿のおじさん達の中にポータブルプレーヤーを腰に付けた若い女の子が一人で立っていた。外見はごく普通の大学生風。しかし、その音漏れがハンパではない。ちょっと離れた位置にいたのに曲が認識できるレベルなのだ。

 不思議なもので、ここまでくると不快を通り越し、思わず耳を傾けてしまう。どうやら音漏れを不快に感じさせるのは、マナーの悪さはもとより、音楽を中途半端に聴かされることにあるようだ。曲として成り立っていると、不快のピークを通り過ぎる。たとえば、人と人との会話は電車内にあって当然なので聞き流せるが、携帯電話の通話になると妙に気になるもの。理性では聞かなくて良い情報だとわかっていても、片方の声しか聞こえないため、内容を補完しようと無意識にあがいているのが不快さの理由かもしれない。音楽の場合も同じだと思う。

 もちろん、たとえ曲として成り立っていても迷惑なのは変わらない。女の子の近くにいる人達が時折視線を投げかけるが、彼女はうつむいているだけ。よく見ると、背中にギターらしき荷物を背負っていたので、もしかすると音漏れしていた曲は彼女自身が演奏したものだろうか。自分の曲を聴いてほしくて“路上ライブ”ならぬ“強制車内ライブ”(録音の時点でライブではないけど)を開催したと考えると、異常な音量にも納得が……さすがにそれはないか。

 結局、その子は三軒茶屋で電車を降り、音漏れとともに去っていった。あのとき、彼女の耳にはどれほどの大音量が響いていたのだろう。単純に音楽を聴くためにボリュームを上げていたとしたら、既に難聴になっているか、その予備軍である。三軒茶屋近辺で心当たりのある方がいたら、改めるように伝えてほしい。

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