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集合住宅の味方、電話や動画にも強いVDSL2インタビュー(2/2 ページ)

» 2006年07月12日 23時41分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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――「トリプルプレイに対応」とは、遅延が少ないと捉えて良いのでしょうか。

 そうです。音声や動画など、リアルタイム性の求められるアプリケーションが支障なく使えるという意味です。たとえばVoIPの音声データは遅延に敏感ですし、動画の場合はインパルスノイズによって画面にブロックノイズが発生したり、再生が途切れたりすることもあるでしょう。

 ARIONでは、VDSL2が持つQoS(quality of service)機能にくわえ、音声データに低遅延パスを割り当て、動画伝送にはインターリーブパスを割り当てるなど柔軟なプログラムが可能です。既存の電話線でも遅延やコマ落ちのないビデオストリーミングや対戦ゲームなどの双方向アプリケーションを楽しめます。

――インターリーブとは何ですか?

 インパルスノイズは、伝送中の信号に対してバースト的に影響を与えます。そこで、VDSLモデムでデータをバッファし、あるアルゴリズムでビット入れ替えを行って送信する――受信側は、同じアルゴリズムで入れ替えられたビット列からデータを組み立てるという仕組みです。本来のビット順がバラバラになるので、ノイズの影響を受けるビットが離散的になり、エラー訂正で復元できる可能性が高くなります。

 この場合、モデム側にバッファ用のメモリを載せる必要がありますが、ARIONではチップに内蔵しているため、外付けの必要はありません。

 また、「XRA」と呼ばれる独自技術でクロストーク(漏話。ケーブルから漏れた信号がほかのケーブルの通信に影響を与える混信現象)を打ち消すことができるのも特徴です。XRAの詳しい内容については、特許の関連があり開示できませんが、クロストークノイズ下でもリンクを保持するための方策があるということです。

――回線状況の悪いマンションなどでも快適に使えるというわけですね。そのほかにユーザーのメリットはありますか?

 われわれは「Atlanta」というVoIP用のコミュニケーションプロセッサやFTTHに使われるPON/ONU向けのチップなども手がけています。セットメーカーの要望により、これらをインテグレーションすることも可能です。つまり、最近の多機能なADSLモデムと同様、1つの箱でVDSLモデムとVoIPやルータの機能を賄う製品を作ることができます。

 私の自宅もそうですが、VDSLサービスの多くはモデムやVoIP機器がバラバラです。いくつもの機器があると、それだけコンセントが必要になるとか、なにかと不便ですが、今後はVDSLモデムも多機能型に向かうと考えています。

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