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BDソフトの本命、最新PHLエンコード画質の衝撃(2/3 ページ)

» 2006年07月14日 09時18分 公開
[本田雅一,ITmedia]

高画質の理由は開発プロセスにアリ?

 前回のUnderworld:Evolutionは、マスターの良さと圧縮しやすそうな映像に引き上げられての高画質だったように思う。またUnderworld:Evolutionと並んで良いと評価した「50 First Date」も、改めて大きな画面で確認したところ(明るい画面が多いため見えにくいが)、部分的にノイズの浮きが多数散見された。これ以外にも、意図的に高域を落として圧縮しやすくしているのでは? と思える場面もある。

 このあたりは今後、徐々に解決していくだろうが、こうした画質の大きな違いはどこにあるのだろうか?

 理由を圧縮コーデックの違いに求めるのは簡単だ。PHLのデモクリップと現在発売されているBDタイトルのビットレートはほぼ同じ18Mbps程度。最大ビットレートは40Mbps対30Mbpsと違いはあるが、もっとも大きな差はMPEG-2とH.264 High-profileの違いである。

 しかし、本当にコーデックの種類の違いだけで片付けて良いのかはわからない。H.264 High-profileは確かにMPEG-2よりも進んだ技術だが、圧縮に使える技術要素の組み合わせは膨大で、エンコーダの性能が良くなければ、低ビットレート時以外はさほどMPEG-2との画質差は出ないといわれている。

 コーデック規格の違いが原因かどうかの結論は先送りにするとして、高画質化の理由は何よりもPHLのエンコーダ開発過程にあるのではないかと推測している。以前、PHLの体制について記事を書いたとき、縦10フィートの巨大スクリーンに業務用フルHD 3板DLPで投影しながら画質チェックしていると紹介したことがある。巨大スクリーンのスグ目の前で、圧縮による影響を見逃さないようチェックするためだ。

 しかしCES後に開発をさらに進めたところ、大きく拡大してもノイズや歪みを(開発者自身が)発見しづらくなってきたため、現在はコントラストを大幅に上げてノイズを浮き立たせ、通常ならば見えないようなノイズもチェック。エンコーダのアルゴリズムへと反映させる作業を繰り返したのだという。

 こうした映像コンテンツ製作の現場を知る読者は少ないだろうが、一般的には32インチの業務用マスターモニターで画質をチェックしながら作業を進めるのが普通だ。コストや効率を考えれば、PHLのようなアプローチは取れない。研究所という位置付けの組織ならではのエンコーダといえるが、先に発表されているように、松下電器はPHL開発のエンコーダを外販するとともに、8月1日より日米のオーサリングセンターでHDコンテンツの制作業務(BDビデオオーサリング業務)を開始する。

 実際にPHLエンコーダを納入しているポストプロダクションスタジオはまだないが、松下電器自身が受注することで、市場にはPHLエンコーダ製作のBDビデオソフトが登場することになるだろう。受注可能なタイトル数の関係で、2〜3の映画スタジオが発売する一部タイトルのみとなる見込みだが、おそらく9月ぐらいにはPHLエンコーダ画質の市販BDビデオソフトがお目見えするだろう。

S/Nとスケーリング性能に優れたDMP-BD10

 日本では発売する予定はないが、松下電器製BDプレーヤーの「DMP-BD10」についても簡単に触れておきたい。

photo DMP-BD10の背面

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