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ギターと同じ素材と製法で作られたスピーカー「D-TK10」短期連載:小さな本格派スピーカーを探す(2/3 ページ)

» 2006年07月28日 01時55分 公開
[本田雅一,ITmedia]

リビングルーム

 まずはD-TK10から。

 エンクロージャ上方に向かってやや絞り込まれ、奥に行くに従いカーブを描くデザインの美しさを持つ本機は、薄型テレビの横にも似合う。特に32インチ程度のテレビと並べると、サイズ的なバランスも良いだろう。

 音の方はこれだけ小さなスピーカーにも関わらず、意外にも低域が元気よく体に届く。もちろん最低域の再生能力があるわけではないが、ロックのベースライン程度であれば、音楽全体のバランスを崩すことなく聴かせるだけの能力はあるようだ。

 正直に告白すれば、箱が鳴りを調教して美しい響きを……と聞いていたので、ロックやポピュラー系のソースとは合わないだろうと勝手に考えていたのだが、そうした傾向は感じられない。箱の鳴りが遅れて耳に届き、それが長い時間残留して聴きづらくなるようなことはなく、スッと音が立ち上がり、消え際もスッと自然。解像度も十分に高い。一方で高域は歪み感なく整えられており、ワイドレンジを感じさせる伸びやかさがある。それでいて耳障りはよく上品さを失わない。

 Donald Fagenはバランス良く聞こえ、ボーカルがきれいに映えた。ただし、Fagenサウンドらしい音の“キレ”は若干削がれる印象。立ち上がりの遅いスピーカーではないが、シンプルかつ繊細なリズム感で勝負する音楽とは、ややけんかする。

 また、Joe Sampleのピアノは最低域が出てこないため、ピアノらしい響きが伝わらない。これは小型スピーカー全般にいえることだが、ピアノの低弦を多用する曲の再生は、サイズとのトレードオフとしてあきらめるほかないだろう。

 しかし本機の低域は比較的なだらかに低域が失われていく印象で、スッパリとある周波数から切れてなくなるという感じではなく、違和感を感じることはない。また中域から上の質感表現、解像度、透明感はさすがで、低弦を響かせるパート以外はクリアな音場が生まれた。

 Matt Biancoとのマッチングは大変良い。ベースラインがややふくらみ気味に聞こえるものの、Basiaのボーカルが上品かつ艶やかに感じられ、それでいて箱鳴りのいやらしさがない。女性ボーカルの上品な美しさはこのスピーカー最大の美点と言える。

 では、低価格なD-112Eはどうだろうか。

 さすがにD-TK10とは価格クラスが異なるため、基本的な質の面ではやや分が悪い。具体的には解像度がやや甘くなり、音場の演出もあっさりとしてる。しかし、低音の出方や中高域から高域にかけての歪み感が少なくキレイに伸びた感じはD-TK10にも通じる良さがある。

 ただし、リングラジエータのイコライザ形状が違うためか、あるいはユニット自体の違いなのか、ややハイ上がりのチューニングで高域が強調されたように聞こえる。また、耳障りの優しかったD-TK10に比べると擦過音がややキツめに聞こえ、女性ボーカルのさ行などはややかすれ気味に聞こえた。ただ低域に盛り上がりもわずかにくわえられ、パンチのきいた元気の良い音は、ポピュラー音楽を聴くには楽しい。

 一方、音の立ち上がりのスピードは遅めに感じられ、シャキシャキ感はスポイルされる。とはいえ、価格を考えればそれも納得。音楽もそこそこ再生でき、メインはテレビやDVD音声のグレードアップが目的というユーザーにはぴったりだろう。

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