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変わりつつあるクラシックカメラの世界小寺信良(1/3 ページ)

» 2006年07月31日 12時50分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 今世紀に入ってからという区切りで考えると、筆者は普通の人よりもフィルムで撮るカメラを多く購入したほうではないかと思う。最初はロシアのLOMOに始まって、同じくロシアのHorizon、昨年は中国の二眼カメラSEAGULLなどを購入してきた。

 この手のオモシロカメラは、現役で製造されている製品だ。これらのカメラが繰り出す若干ユルい映像感覚がデジカメ世代に受けたのか、フィルム文化が若干復活しているような感じも受ける。

 ただ同時にこれらのものはまた、チープな一過性のブームのような印象も受ける。LOMOは面白いカメラだとは思うが、残りの人生全部の記録がLOMOで済むかと言われれば、そうはいかない。やはりこれは、遊びだから楽しめる「余裕」なのである。

 では今、真剣にフィルムに取り組もうとするならば、どんな手段があるだろうか。筆者はそこに、「クラシックカメラ」という答えを見いだすのである。クラシックカメラは、以前から趣味の世界では根強い人気のある分野だ。ちょっとオシャレなモノ系雑誌でLeica M3をアツく語るエッセイなどを見かける機会もままある。

 だがそういうものを見るたびに、どうもクラシックカメラというのは趣味として高尚で、なーんかこうロマンスグレイに口ひげ蓄えたおじさまがエビ色のチョッキかなんか着ちゃってソファに深々と腰かけながら手の中のLeicaを満足げになで回す中にもキラリと光るスルドイ視線のメガネはもちろんHOYAバリラックスII、みたいなイメージを連想してしまうのである。

 だが最近はクラシックカメラにハマる層というのが、以前のおじさまの趣味とはあきらかに違ってきている。

イマドキのクラカメ道

photo 「オンナのクラカメ道さん」こと入倉絵里さん。撮る写真は日常のスナップがほとんどだと言う

 「オンナのクラカメ道」というblogを運営する入倉絵里さんも、クラシックカメラに魅せられた一人である。これまでに入手したクラシックカメラは30〜40台。使わないものは手放してしまうが、手元には多いときで10台ぐらいのカメラがあるという。

 元々はライターだったという入倉さんだが、筆者と知り合った頃はライブドアのニュースサイトである「livedoorコンピュータ」の編集長をされていた。現在はライブドアを退職されている。

 前出のように、クラシックカメラと言えばLeica、Leicaといえばおじさまと連想しそうだが、入倉さんがクラシックカメラ目覚めたきっかけは、いま多くの人が感じつつあるところなのではないだろうか。

 「仕事のレビューでデジカメとか書くことが多くて、さんざん借りるわけですよ。だいたい私はコンパクトデジカメとか一眼では入門機モデルのあたりを書くことが多かったんですけど、なんか疲れて来ちゃった(笑)。いっぱい並べば並ぶほど、差が見えなくなって来ちゃって。今度は画素数が400万画素が500万になったとか、まあちょっと色が違ったり形が違ったりする程度で、『あと値段じゃない? 普通の人が買うとき』 みたいな」(入倉さん)

 そんなときに、クラシックカメラの世界と出会う。

 「でもなんか違いを見つけて記事を書かなきゃいけないときに、普通のカメラ雑誌とかも読むようになったんです。撮り方とかの参考になるなと思って最初は見てたんですけど、昔のカメラの写真とかが載ってるわけですよ。へえ、こんな形のがあるんだとか、こんなんでどうやって写真撮るんだとか興味が出てきて、じゃあそういうカメラ屋さんに一度行ってみようかなぁと思ったのがきっかけですね」(入倉さん)

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