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ソニー・西谷氏に聞く、新しいBlu-rayレコーダーとBD関連ビジネスの展開CEATEC JAPAN 2006(2/3 ページ)

» 2006年10月10日 12時53分 公開
[本田雅一,ITmedia]

「まだワーキンググループにまでは発展していません。ちょうど、興味を持つ有志で相談しているところです。ただ、日米欧でブロードバンドの普及や帯域が異なることもあり、地域ごとの温度差がありますね。家電メーカー間の考え方の違いや、ハードウェア製造とソフトウェア制作という事業形態によるさもあります。そのあたりを、本格的に進める中では調整していかなければならないでしょう」

――BDの立ち上げの後を見据えて、何か新しいことにトライ、あるいはビジョンを探す段階ということでしょうか?

「映像を楽しむための文化というものが、日本の企業に残るには次の新しい楽しみを見つけていかなければならないでしょう。音楽の場合は、先ほども例に挙げたように半導体や小型ハードディスクを使ったプレーヤーが現れたのに、ユーザーニーズと企業の進む方向がずれ、日本企業の手から市場がこぼれていきました」

「しかし映像はオーディオとは異なるスタイルで楽しむものですよ。高品質のハイビジョン映像をホームシアター的に楽しむという文化もありますが、それ以外にも従来の映像の楽しみ方とは別の世界を定めるような製品、コンセプトを生み出さなければなりません。ハードウェアとしてはBDレコーダーやブラビアを用意しましたが、それらハードウェアを用い、どのような映像サービスを消費者に届けられるかを考えていきたい」

――単にHD映像、つまり高解像度というだけでなく、その先にある高画質、本質的な意味での画質ですが、ソニーとしてBDの時代を作っていこうというのなら、単に製品のどこどこを良くしましただけでなく、マニアも唸るような提案性のある高品質製品で、将来登場する製品のベンチマークとなるものが欲しいです。

「HDになって品質は底上げされますが、その先の表現力を高める手法を模索しています。たとえばビデオカメラ撮影、フィルム撮影、あるいはフルCG制作。これらの質の差がハッキリとわかってもらえるような仕組みを作りたいですね。フィルムらしい表現とは何なのか? このあたりはテレビの開発部隊とも共同で作業しています」

――フィルムらしさ(映画らしさ)という意味では、発色や明暗のトーンカーブもそうですが、何より動きの再現が必要ではないでしょうか。ディスプレイ側の画面リフレッシュレートが24の倍数で駆動できるよう設計する必要があるでしょう。

「その点は話をしています。ただ、映画は暗い部屋で見ることを前提にしていますから、明るい部屋で明るいディスプレイを見ていると、フィルム映画の本当の高い質感がわかりにくいというのもありますね。こちらは解決が難しそうですが。しかし、ソニーは放送機材からオーサリング、BDのプレス、プレーヤー・レコーダー、ディスプレイまで、あらゆる分野をカバーしていますから、ソニーを用いることで一本筋が通ったコンテンツの流れを作りたいと思っています」

――ところで、日本ではレコーダーのみの発表ですが、プレーヤーの発売は検討していませんか?

「販売会社には“今度は(市場が)あるよ”と言っています。DVDの時には、あっという間に低価格化して市場がなくなりましたが、今回はプレーヤー市場も国内できちんと作れると思います。商品化についてはまだ、具体化していませんが」

――ソニースタイル限定での販売といったことは考えられませんか?

「そうした少量出荷も含め、なかなか難しいですね。PS3が出てきて市場が大きくなれば、風向きが変わるかなと現在は思っています」

――そのPS3はアナログ出力はともかく、デジタル出力の品質に関してはかなり良さそうです。特に音の評判は高いようです。専用のプレーヤー、レコーダーを開発する事業部としては、ハイエンドAV機器を持つベンダーとして、他の家電メーカー比で突き抜けたクオリティの製品も必要ではありませんか?

「発表したBDレコーダーのデザイン、シャシー構造、専用オーディオ基板などは、AV的な視点でかなりの自信を持っています」

photophoto BDZ-V9は、天板に厚さ3.5ミリのアルミ材を使用(右)。無反発ゴム付き偏心インシュレーターとともに余分な振動を抑える。映像系からの干渉やノイズ混入を防ぐため、アナログ音声基板を独立させた(左)。基板には、同社のハイエンドオーディオコンポーネント「ESシリーズ」にも使われたバーツが並ぶ

――しかし果たして突き抜けているか? と言えば、やや疑問もあります。BDプレーヤー、レコーダーで高品質なものは、AV専業ベンダーが参入してくるまでは生まれない可能性があります。立ち上げ初期の今こそ、高品質製品も必要なのでは?

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